アオバラヨシノボリの特徴
アオバラヨシノボリは、沖縄本島のみに分布する固有のヨシノボリです。
沖縄本島の北部「やんばる」と呼ばれるエリアにのみ分布し、全身の透明感が特徴的な貴重なヨシノボリです。
全体的に無地で、特徴的な色彩を持たないことが本種の特徴と言えるかもしれません。
本種は2021年11月より、沖縄県希少野生動植物種保護条例により無許可での採捕は禁止となりました。
指定以前に採集された個体は、引き続き飼育は可能です。
当サイトで紹介している個体は全て、指定以前に捕獲された個体およびその子供となります。
他のヨシノボリに比べ寿命もやや長いらしく、3~5年程度生きるようです。
繁殖期になると、♀の腹が青く染まります。
♀の腹が青く染まる種類は他にもいますが、この特徴が本種の名の由来となったようです。
本種はかつて、キバラヨシノボリと一括りに「中卵型」と呼ばれていました。
どちらも陸封型で、海に降りることなく一生を河川で暮らします。
基本情報
学名 | Rhinogobius sp.“BB” ※学名未決定 |
旧名 | ヨシノボリ中卵型(Rhinogobius sp.“BB”) |
サイズ | ふつう全長3~5cm程度。 |
生息環境 | 沖縄本島北部河川上流部にのみ分布します。 分布域では個体数は多い傾向があるものの局所的な分布をしています。 河川に開発が入ると容易に姿を消しうる脆弱性があります。 かつて大規模な生息地がありましたが、ダム開発により個体数が著しく減少したという報告があることもその裏付けとなります。 |
生活史 | 陸封型 |
卵形 | 中卵型 |
回遊型に比べると卵サイズが大きめです。
しかし、カワヨシノボリよりも一回り小さい印象です。
孵化仔魚のサイズは他のヨシノボリより大きめで、ヨークサックを吸収するとすぐブラインシュリンプの幼生を食べることができます。
項目 | 評価 | 備考 |
---|---|---|
見つけやすさ | 1 | 沖縄県のごく一部の地域にのみ分布します。 |
捕まえやすさ | – | 沖縄県希少野生動植物に指定されています。 条例により捕獲できません。 (2020年以前は可能でした。) |
飼育しやすさ | 4 | 標準的な設備で簡単に飼育できます。 |
餌付きやすさ | 5 | 人工餌にも容易に餌付きます。 |
気性の荒さ | 1 | ヨシノボリとしては温和です。 |
アオバラヨシノボリの見分け方
チェック1
顔つきを見ます。
上顎が突出します。
チェック2
頬の模様を見ます。
無地です。
チェック3
尾鰭の模様を見ます。
無地です。
頬と尾鰭が無地です。
背鰭や尻鰭にも目立った模様は入りません。
アオバラヨシノボリはとにかく無地、模様らしい模様がほとんど入らないと覚えておくと良いでしょう。
♀では第2背鰭、尾鰭に不明瞭な破線模様が入る個体がいます。
アヤヨシノボリと酷似するため、アヤヨシノボリを狙っての採集の際は注意が必要です。
♂は頬の青い斑点の有無で容易に区別可能ですが、♀の判断は難易度高めです。
頬の青い斑点が目立たない個体が少なくない数存在します。
尾鰭の筋模様はアオバラヨシノボリよりもくっきり、ほぼ全個体に入ります。
背鰭の筋模様もアオバラヨシノボリよりは濃く入る傾向があります。
ほぼすべての個体の頬に青い斑点があるので、♂の識別は容易です。
アヤヨシノボリの採捕に制限はありませんが、アオバラヨシノボリは無許可での採捕が禁止されているため、アヤヨシノボリを狙って採集する場合は要注意です。
アオバラヨシノボリは上流域を中心に生息するのに対し、アヤヨシノボリは中流~下流域を好む傾向があります。
中流域で同所的に見られることもありますが、アオバラヨシノボリは下流域に出ることはまずほとんどありません。
本種の外観はアヤヨシノボリとよく似ていますが、生態はキバラヨシノボリと似ています。
本種と同じく陸封型の生活史を持つキバラヨシノボリは、生息している各離島で平行進化を遂げたと考えられています。
本種ももしかすると、沖縄本島の西と東とで遺伝的に分化するとされていますが、これはアヤヨシノボリとの共通祖先が東西それぞれで平行進化を遂げたものであるのかもしれません。
アオバラヨシノボリのオスとメス
アオバラヨシノボリは沖縄本島の西海岸、東海岸それぞれに流れ込む河川で遺伝的に識別可能な集団と考えられています。
ここでは、西海岸、東海岸それぞれに流れ込む河川産の個体を紹介します。
西海岸河川産
東海岸河川産
外観的な特徴は、西海岸河川産のものと特に変わらないように見えます。
アオバラヨシノボリの分布
本種の生息状況について筆者の経験では、生息地での個体数は多く「いるところにはたくさんいる」タイプのヨシノボリと思います。ただし、分布は局所的です。
いるところにはたくさんいるようです。
撮影後、必要数をキープしてリリース。
現在は無許可での採捕は禁止です。
生息状況を見る限り、また飼育上の感想としては、環境が整っていれば強健種だと思います。
2019年に採集した個体も2022年現在健在で、少なくとも3年以上の寿命はあるものと思われます。
しかし、強健種であっても、かつて数多く分布していたエリアにダムが建設された後、生息数が激減した という報告があります。
環境の変化によっては容易に姿を消してしまう一面もあるものと思われます。
野生集団について、今はもう見守ることしかできません。
飼育系統は維持しつつ、やんばるの自然の中でいつまでも繁栄していくことができるよう、適切に保護されることを切に願います。
ギャラリー
西海岸河川産
自家繁殖個体の群れ
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