カワヨシノボリ無斑型

カワヨシノボリ 石川県産

カワヨシノボリの特徴

カワヨシノボリは、西日本を中心に広域に分布するヨシノボリです。

本種は西日本では最も一般的なヨシノボリです。
西日本の上流域の河川で川遊びをして採れるヨシノボリは、多くの場合本種でしょう。

東日本にも一部生息します。
しかし、静岡県富士川水系よりも東に分布するものは全て人為的な移入によるものと考えられているようです。

また、カワヨシノボリは大きく分けて5タイプいると言われており、その中でも最も広範囲に生息する本タイプは”無斑型”と呼ばれています。

見分け方のコツ!
  • 西日本の河川上流域では高確率で本種です。
  • 胸鰭の条数が17本以下ならほぼ間違いなく本種と断定できます。
  • 色や模様は個体差が大きく、他の種類に似ることもあります。

多くのヨシノボリは孵化後海に下る種類が多い中、本種は孵化後海には下ることなく、一生を淡水で暮らします。

基本情報

学名Rhinogobius flumineus
記載Mizuno,1960
サイズふつう全長4~6cm程度。
食性雑食性。やや肉食傾向で、水生昆虫が主食と思われます。
生息環境河川中~上流部に主に生息します。
やや流速のある環境を好み、止水にはあまり生息しません。
西日本の河川上流域で見られるヨシノボリは、ほとんどの場合本種でしょう。
生活史陸封型
卵形大卵型
カワヨシノボリの卵
カワヨシノボリの卵

本種はヨシノボリ属魚類のなかでは唯一の大卵型で、ヨシノボリとしては大きめの卵を産みます。

カワヨシノボリ 評価
項目評価備考
見つけやすさ5西日本なら簡単に見つかります。
捕まえやすさ5簡単に捕まえられます。
飼育しやすさ5標準的な設備で簡単に飼育でき、丈夫です。
餌付きやすさ5人工餌にも容易に餌付きます。
気性の荒さ2ヨシノボリにしては比較的おとなしめです。
カワヨシノボリの生息環境

日本海側は富山県以西、太平洋側は静岡県以西であれば多くの川に分布しています。
西日本ではふつうによく見られるヨシノボリです。

流れが早めの浅い河川に居ることが多いです。
石の下だけでなく、川岸の草むらに隠れていることも。

カワヨシノボリの見分け方

チェック1

★最注目ポイント:胸鰭分枝軟条数

胸鰭分枝軟条を見ます。(詳しくは後述)

やや見づらい部分ですが、ここが最大にして唯一と言える特徴かもしれません。

カワヨシノボリであれば15~17本です。

チェック2

顔つきを見ます。

上あご突出であることが多いです。

チェック3

オスの背鰭を見ます。

先端は尖り、伸長することが多いです。


カワヨシノボリは模様の個体差が激しいため、他のヨシノボリで用いられるような各部の模様での判定はあまりあてになりません。

実質的にカワヨシノボリと断定できる特徴は、ほとんどの場合胸鰭の分枝軟条になると思います。
慣れると顔つきで何となく判断できるようになりますが、これは図や言葉での説明がちょっと難しいです。

トウヨシノボリとの類似性

特にトウヨシノボリとは、色彩が不定な点でも極めて類似します。

外観の特徴から判断が難しい場合、大抵は本種かトウヨシノボリの2択となることが多いです。

また、以下の地域で採れたものであれば、カワヨシノボリの可能性はほぼ除外して良いでしょう。

北海道、青森、秋田、岩手、宮城、福島、新潟、群馬、栃木、茨城、千葉、熊本、鹿児島、沖縄

沖縄県にはどちらも分布しません。
上記以外の地域で採れたものであれば他の種類に落とし込めないヨシノボリは、本種かトウヨシノボリかの2択となることが多いです。

しかし、胸鰭の分枝軟条数が17本以下となる種類は基本的に本種のみです。
このため、胸鰭で区別するのが最も確実性が高い判別法となります。

胸鰭の分枝軟条数を数えよう

分枝軟条とは、胸鰭にある”先端に枝分かれが見られるスジ”の部分を指します。
このうち、枝分かれしていない根元の部分を1本としてカウントします。

カワヨシノボリ

トウヨシノボリ

本種の判定の際は、このように胸鰭の分枝軟条数を見るのが最も確実です。
これが17本以下であれば、ほぼ間違いなくカワヨシノボリである と断定できるでしょう。

慣れてくると、胸鰭鰭条の”間隔の広さ”でなんとなく区別できるようになります。
カワヨシノボリの方が隙間があります。

※ただし、まれに「トウヨシノボリ」で17本の個体も存在するようです。


カワヨシノボリのオスとメス

♂個体

カワヨシノボリ♂
石川県産 ♂

♂は背鰭が尖り、伸長します。

♀個体

カワヨシノボリ♀
石川県産 ♀

♀は背鰭が丸く、伸長しません。

カワヨシノボリの外見的特徴は個体差が大きいです。
背鰭を見ることで雌雄は見分けられますが、それ以外の個所ではこれと言って特徴を見出すことは困難です。


カワヨシノボリのさまざまな「型」

カワヨシノボリはさらに、遺伝的に異なる複数の集団に区別ができる とも考えられています。
少なくとも5つの型が知られており、さらに詳細不明と考えられている集団も存在するようです。

型名分布域

無斑型
広域
斑紋型山陰~九州北部
壱岐-佐賀型九州北部
富士型山梨県、静岡県
赤石型静岡県
不明型長野県、静岡県、福井県、長崎県

▼詳しくはこちらの記事で

▼各集団の個別解説はこちら

参考文献

吉郷英範,分布域東限に生息するカワヨシノボリ(硬骨魚類綱:スズキ目ハゼ科)の形態,比和科学博物館研究報告 第52号 別冊,2011


カワヨシノボリの分布

カワヨシノボリの分布図
分布域

在来分布
長野県、山梨県、富山県、石川県、福井県、岐阜県、静岡県、愛知県、
滋賀県、三重県、奈良県、大阪府、和歌山県、兵庫県、岡山県、広島県、
鳥取県、島根県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県
長崎県、大分県、宮崎県

斑紋型
広島県、鳥取県、島根県、山口県、福岡県

壱岐佐賀型
佐賀県、長崎県

富士型
山梨県、静岡県

赤石型
静岡県

不明型
長野県、福井県、長崎県(福江島)

※無斑型と重複分布する都道府県もあります。

移入分布(赤)
埼玉県、東京都、神奈川県

西日本を中心に分布します。北関東以北には本種は分布しません。
関東のものは移入個体群と考えられています。


ギャラリー

カワヨシノボリ無斑型の画像です。
最も広域に分布が見られ、カワヨシノボリとしては一般的なタイプです。

岐阜県産の同一河川で採集された個体です。
尾鰭の縞模様の有無など、個体差が非常に大きいです。


動画

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