カワヨシノボリ不明型

共通する基本情報

学名Rhinogobius flumineus
サイズふつう全長4~6cm程度。
食性雑食性。やや肉食傾向で、水生昆虫が主食と思われます。
生活史陸封型
卵形大卵型

大きく分けて3グループ

カワヨシノボリには「無斑型」「斑紋型」「壱岐佐賀型」「富士型」「赤石型」の5型が知られています。
そしてその5型いずれにも該当しないものが一部存在し、これらが「不明型」と呼ばれています。

「不明型」とされるカワヨシノボリは、大きく3グループに分けられます。

  • 長野県産
  • 福井県南部産
  • 長崎県五島列島産
カワヨシノボリ不明型 長野県産
カワヨシノボリ不明型 福井県産
カワヨシノボリ不明型 長崎県福江島産

これら3グループはそれぞれ特徴が異なります。
将来的には、別の型として整理される可能性もあるかもしれません。

長野県の不明型

見分け方のコツ!
  • 長野県で広く見られる、カワヨシノボリの地域変異個体群です。
  • 胸鰭の条数はカワヨシノボリ同様17本以下です。
  • 頬の赤小斑点が密集気味で、エラブタにまで入る傾向があるようです。

他の産地のものと比較して頬に赤色小斑点が散在しており、その密度も高い個体が多い傾向があるように見受けられます。エラブタ~胸鰭付け根付近まで入る点が印象的です。

項目評価備考
発見5簡単に見つかります。
捕獲5簡単に捕まえられます。
飼育5標準的な設備で飼育でき、丈夫です。
餌付4無斑型より多少餌付きにくいです。
気性3無斑型よりやや荒めです。

無斑型に比べ捕獲に関してはさほど変わらない印象です。
長野県南部の河川で最も多くみられるヨシノボリは、おそらく本種でしょう。

飼育に関しては無斑型よりも多少クセのある印象です。
若干気が荒めで、人工飼料に餌付きにくいところがあるようです。

♂個体

カワヨシノボリ不明型♂ 長野県産
カワヨシノボリ不明型♂ 長野県産
カワヨシノボリ不明型♂ 長野県産

♀個体

カワヨシノボリ不明型♀ 長野県産
カワヨシノボリ不明型♀ 長野県産
カワヨシノボリ不明型♀ 長野県産

福井県南部の不明型

見分け方のコツ!
  • 福井県南部の一部地域に見られる、カワヨシノボリの地域変異個体群です。
  • 胸鰭の条数はカワヨシノボリ同様17本以下です。
  • 背鰭前方鱗数が7~11枚とやや多く、♀の尾鰭の最も外側の横縞が幅広くならないことが相違点とされています。
第一背鰭付け根の拡大。
コントラストをいじった写真。
胸鰭の付け根付近の位置まで鱗があるように見えます?
標本にしないと、生時に正確な計測は難しいかもしれません。

項目評価備考
発見5簡単に見つかります。
捕獲5簡単に捕まえられます。
飼育3無斑型に比べ環境を選びます。
餌付3やや餌付けにくいです。
気性4比較的荒めです。

無斑型に比べても、捕獲に関してはさほど変わらない印象です。
福井県内でも生息するエリアはやや限られますが、分布域では個体数は多いようで、捕獲は難しくない印象でした。

飼育に関しては、カワヨシノボリの中では最も気が荒い集団だと思います。
他のカワヨシノボリと比較しても喧嘩っ早い印象を受けました。

人工飼料にもやや餌付きにくいところがあり、少し飼育しにくい印象を受けます。
多頭飼育には向いてないかもしれません。富士型に次いで飼いにくい印象の集団です。

♂個体

カワヨシノボリ不明型♂ 福井県産
カワヨシノボリ不明型♂ 福井県産

♀個体

カワヨシノボリ不明型♀ 福井県産
カワヨシノボリ不明型♀ 福井県産

五島列島の不明型

見分け方のコツ!
  • 長崎県五島列島に見られる、カワヨシノボリの地域変異個体群です。
  • 胸鰭の条数はカワヨシノボリ同様17本以下です。
  • 壱岐佐賀型と無斑型の中間といえるような個体で、壱岐佐賀型よりもシャープで、無斑型よりも丸みを帯びた体形をしています。
  • ♂は尾柄部に目立つ橙色斑を持ちます。
  • 腹部に白斑が2つ並びます。
腹部の白斑は五島産特有の特徴かもしれません?

項目評価備考
発見4ポイントを選べば見つかります。
捕獲4比較的簡単に捕まえられます。
飼育4標準的な設備で飼育できます。
餌付3やや餌付けにくいです。
気性2比較的おとなしめです。

無斑型に比べると、やや捕獲に関しては難しい印象です。
捕獲には少々コツがあるようで、コツを掴めば難しくないと感じましたが、コツを掴むまでは難しいと思えるかもしれません。
いるところには固まっているタイプのヨシノボリのようです。

飼育に関しては、やや餌付けにくい点を除けば比較的飼いやすい集団だと思います。
体側に2つ並ぶ白斑は水槽内のほうが観察しやすいです。
気性はさほど荒くないようです。

♂個体

カワヨシノボリ不明型♂ 福江島産
カワヨシノボリ不明型♂ 福江島産
カワヨシノボリ不明型♂ 福江島産

♀個体

カワヨシノボリ不明型♀ 福江島産
カワヨシノボリ♀ 不明型 福江島産

五島列島産の個体に関しては他の不明型と比較しても異質な部分があり、第6の型として「五島型」の名称が提唱されています。

福江島産個体は背鰭前方鱗数が 9~13 でその先端が左右の前鰓蓋骨を結ぶ線上に達するが,壱岐佐賀型よりも前方まで分布する。

雄の第一背鰭は第 3 棘が最も伸長し,短烏帽子のような形状のものと,伸長しない台形型が 7: 3 程度の割合で見られた。

背鰭形状は体長による有意差は見られなかった。背鰭に斑紋はない。雄の尾鰭の基部上部には三角形の橙色斑がある。これら雄の外部形態の比較から福江島個体は,他の表現型と異なる形質を示し,体長に関係なく背鰭形状が短烏帽子:台形=7: 3 となることは,特筆すべきである。雄体側の色彩斑紋にも,赤色斑が認められるなど,吉郷(2003, 2011)が報告した 5 つの表現型との違いが見られた。

それらの差異は顕著であり,福江島産カワヨシノボリを第 6 の表現型,「五島型」としてここに報告する。

太田 翔・市丸 智規,長崎県産カワヨシノボリの表現型と生殖的隔離の可能性について,2023 より一部抜粋
長崎県産カワヨシノボリの表現型と生殖的隔離の可能性について
研究要旨 カワヨシノボリRhinogobius flumineus (Mizuno,1960) は,スズキ目・ハゼ科・ヨシノボリ属に分類される体4–5cm の純淡水性魚類で,日本固有種とされる(水野2001;明仁ら2000)。本種は多くのヨ...

参考文献

報文

吉郷英範,分布域東限に生息するカワヨシノボリ(硬骨魚類綱:スズキ目ハゼ科)の形態,比和科学博物館研究報告 第52号 別冊,2011

※より詳しい特徴は上記報文の「記載」を参照すると良いでしょう。

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