9月の遠征、第二弾はなんと離島。
長崎県、五島列島の一つ、福江島。
今回のターゲットはカワヨシノボリ。
カワヨシノボリは西日本の広範囲に分布が見られる普通種です。
が、あえて離島まで行って狙うのは……それなりの理由があります。
またサブターゲットとして、クワガタ採集も少しやりました。
(同行者がおり、そちらは昆虫採集がメインとのこと)
五島列島には「ゴトウヒラタクワガタ」というヒラタクワガタの亜種が分布しています。
こちらも一応、今回のターゲットです。
五島らしさってなんだ?
こんな感じのやつです。
五島列島のカワヨシノボリを採集するのは、実は今回がはじめてではありません。
5年以上前のことですが、クワガタ採集メインで訪れた際に、少量採集していました。
当時はあまりカワヨシノボリに関して特に気に留めていなかったのですが、カワヨシノボリの各型を集めているうちに再び訪れたくなった次第です。
というのも、五島列島には既知のどの型にも分類できない、”不明型”とされるカワヨシノボリの分布が知られています。
五島列島のカワヨシらしい特徴はどこにあるかというと…….。
- 背鰭の伸張が弱い
- 頭部が若干短いが、壱岐佐賀型に比べると長い
- ♂の尾柄部に橙色斑が高確率で入る
- 総じると、(壱岐佐賀型+無斑型)÷2
これらが挙げられるかな、と思います。
壱岐佐賀型に比べると背鰭の伸張が見られますが、無斑型ほどは伸びません。
このあたりが「五島列島産の不明型らしさ」、ということになると私は考えています。
というわけで再訪、福江島!
前回紹介した沖永良部島に並び、五島列島もお気に入りの島の一つです。
再訪!五島列島!
はじめて五島列島に来たときは、実は初日は土砂降りでした。
今回は天気に恵まれました。
五島列島といえば、何を思い浮かべるでしょう。
私はカワヨシノボリとゴトウヒラタを思い浮かべますが、五島うどんに五島灘で獲れるおいしい海鮮、椿の花、かんころもち、鬼岳を中心とした溶岩地質、などが五島らしい要素として挙げられるかと思います。
というわけで、しょっぱなから、寿司。
同行者が昆虫採集希望ということもあり、初日はクワガタ採集のポイント探し。
魚の採集は翌日からです。
散策をしていると、五島列島固有亜種、ゴトウヒラタクワガタを早速発見しました。
正直9月ともなると昆虫の遭遇率は盛夏に比べやや落ちます。
そんなわけで、クワガタに関しては採れたらいいな~ぐらいで考えていました。
一応のターゲットではあるので、良い出だしです。
また道中で、ヨシノボリと思わしき魚がいる止水域を発見。
降りるのは少々厳しそうでしたが、動画を回しておきました。
生息環境的に、おそらく陸封型のトウヨシノボリ?と思われます。
釣り竿も持ってきていたのですが、ラインが足りませんでした、残念。
また道中、小さな漁港に寄って海を眺めてみると。
大量のタコクラゲが浮いている場所を見つけたりもしました。
夜のクワガタ採集
まずはラーメンを食べてから。
その夜、クワガタ採集に出かけました。
昼のうち下見したポイントで、初日にしてゴトウヒラタの大型個体を発見!
私としてのクワガタ採集はこれにて目標達成。
ゴトウヒラタはオキノエラブヒラタに次いで私の好きなクワガタでもあります。
オキノエラブのような明確な特徴があるわけではないですが、ツシマに比べややマイナーな存在である点が逆に良い、ですね。
記載されない宝物
福江島 二日目。
この日はいよいよ本題である、淡水魚採集の日。
ちょっと午前中に昆虫採集をした後に目的の川に向かい、網を入れてみると。
カワムツは、福江島ではおそらく最もよく見かける淡水魚です。
上から泳ぐ様子を目視できることも珍しくありません。
もうしばらく網を振るっていると。
今回のメインターゲット、カワヨシノボリが入りました。
カワヨシノボリ自体は西日本の各地に広く分布していますが、五島列島の個体群に関しては「不明型」とされており、既知のどの型にも該当しない集団であることが知られています。
最初なかなか数が採れずに苦戦しましたが、コツをつかむと、結構数が採れます。
個体数は多いようです。
4日間の遠征予定でしたが、2日目にて私の目的はすべて達成!
尾鰭にオレンジに入るのが♂。
トウヨシノボリと比較して胸鰭の条数が17本以下と少ないです。
♀に関しては、無斑型や壱岐佐賀型との明確な違いはあまりないように見えます。
無斑型に比べると頭部が短く、壱岐佐賀型に比べると長いぐらい、でしょうか。
全体的にサイズが小ぶりなのと、♂の背鰭の伸張が弱いため、雌雄判別に難儀します。
尾柄部がオレンジに染まっていれば♂ですが、このサイズだと発色も弱くて難しいです。
五島のスーパー、鮮魚コーナーが大変充実していました。
安く刺身を買って、夜に食べても良かったかもしれません。
カワ以外のヨシノボリ
この後、ほかにもいくつか川によりました。
ほかの川で見られた魚の写真をお届けします。
トウヨシノボリに関しては前回の遠征で採集した個体が今もなお存命であるため、今回は持ち帰りませんでした。(長生き!)
新規ポイントの開拓に成功した、という観点では収穫といえるでしょう。
(ただその後、ちょっと面白い話を聞いたので、少し持ち帰ってもよかったかもしれません……。)
そろそろ寿司を食べないと
川から上がって。
この日の晩飯も、寿司。
知る人ぞ知るアイツ
夜のクワガタ採集ではマイマイカブリを発見。
福江島のマイマイカブリは大型になることが知られており、これをメインターゲットで来る人もいるのだとか。
マイマイカブリは目的ではないので、捕まえて観察した後、放したらそそくさと逃げていきました。
見た目よりもなかなかの俊足です。
後悔しない生き物採集
福江島、三日目。
明日は午前中のうちに島を出るので、実質最終日です。
ただ、私はこの時点でターゲットをすべて制覇していたので、後の行動には多少の余裕があります。
同行者は引き続き昆虫採集を希望するため、多少そちらにリソースを割きつつ、私は島の風景の撮影とポケモンGOに注力しました。
島での採集に、ほぼ一片の悔いなし!
ばえー!おーじょした!(訳:うわー!困った!)
ここまで順調だった五島の旅でしたが、ここにきて想定外のトラブル発生。
帰りの飛行機が整備の関係で飛ばないため、接続便に間に合わないとの旨のメールが来ました。
さあ困った!このままでは明日帰れません。
ひとまず空港に電話してみるも、しばらくかけてみましたが混んでいるのか繋がらず。
この時点での選択肢は2つで、
- 接続が間に合わない予約をキャンセルして、今空いている別の便を予約する
- 翌朝空港に直接行き、振替便の交渉をする
1は確実ですが一人当たりン万円の損失が出るため、ちょっと出費としては手痛いところ。
直接交渉すればなんとかなるんじゃないか?と判断し、最終的に翌朝のチェックアウト後に即刻空港に向かう判断をしました。なんとかなれーッ。
最終判断をした時点でまぁまぁ夜遅くなってしまったため、お店での食事は難しいと判断し、この日はコンビニ飯。
本来は飯食べてきた後もう1回探索する予定だったのですが、これは中止になってしまいました。
その翌日、朝一で空港に向かい……。
私「あのー、かくかくしかじかで。」
係の人「振替便手配しますねー。」
・・・
なんとかなったッ!
窓口で事情を説明したら、割とさっくり振替便の用意ができました。
あまりにさくっとだったので拍子抜け。
出発まで少し時間があるので、空港の周りを見て回ります。
正直日程に対してロスタイムが多いような感じはするものの、イレギュラーの発生はまぁ致し方なし。
目的は達成しているのでよしとしましょう。
出発待機
バラモン凧は五島の代表的な伝統工芸品です。
空港内に展示されています。
観光としてもなかなか楽しめました。
今回宿泊した施設、宿の方によると釣り客も多いそうで、魚釣りの後に使いたい設備も一通りそろっていました。
次回は釣りメインで来てもいいかも。
そんなこんなで、五島うどんを食べてから、帰路に着くのでした。
長崎で乗り継いで
翌夏には島ではなく、実は未踏の地である長崎県の本土側に行きたいと考えています。
西九州のトウヨシノボリやカワヨシノボリ壱岐佐賀型を狙いつつ、対馬でも壱岐でも五島でもない長崎県の島のヒラタクワガタを狙ってみたいですね。
なお、幸か不幸か。
先述のトラブルで利用予定の便よりも後ろ倒しになったことにより、長崎空港での待ち時間がたまたま偶然、ポケモンGOのイベント開催時間と合致。
本来、この日は参加をあきらめていたポケモンGOのイベントに、利用予定便が遅延したことで逆に参加できました。
色違いも出て満足。
この夏は、長崎で降りて採集・・・!
羽田に戻って
あっという間の4日間。
関東に戻ってきました。
羽田空港内、沖縄のブルーシールのアイスや北海道のラーメンなど、結構ご当地グルメが充実していてたのしいです。
時間に余裕を持った計画が大事ですね。
変わりゆく分類
五島列島産の「不明型」カワヨシノボリに関しては、近年の研究により「五島型」の名称が提唱されています。
福江島産個体は背鰭前方鱗数が 9~13 でその先端が左右の前鰓蓋骨を結ぶ線上に達するが,壱岐佐賀型よりも前方まで分布する。
太田 翔・市丸 智規,長崎県産カワヨシノボリの表現型と生殖的隔離の可能性について,2023 より一部抜粋
雄の第一背鰭は第 3 棘が最も伸長し,短烏帽子のような形状のものと,伸長しない台形型が 7: 3 程度の割合で見られた。
背鰭形状は体長による有意差は見られなかった。背鰭に斑紋はない。雄の尾鰭の基部上部には三角形の橙色斑がある。これら雄の外部形態の比較から福江島個体は,他の表現型と異なる形質を示し,体長に関係なく背鰭形状が短烏帽子:台形=7: 3 となることは,特筆すべきである。雄体側の色彩斑紋にも,赤色斑が認められるなど,吉郷(2003, 2011)が報告した 5 つの表現型との違いが見られた。
それらの差異は顕著であり,福江島産カワヨシノボリを第 6 の表現型,「五島型」としてここに報告する。
実際に今回の遠征で観察していても、福江島のカワヨシノボリは他の集団と比較して異質な印象を受けました。
上述の参考文献にて、この集団が他集団と比較して特異である根拠が出ている以上、「五島型」と呼ばれる日もそう遠くないように思えます。
リザルト カワヨシノボリ不明型(福江島産)
腹部の白斑で同定可能?
福江島産のカワヨシノボリを採集・撮影・飼育していて気づいたのですが、どうやらこの個体群はリラックスしているとき、腹部に2つ並ぶ白斑がどの個体にもみられるようです。
カワヨシノボリは一般に斑紋が不定で固定差が激しく、基本的に同定には利用できません。
しかしながら福江島産のカワヨシノボリには、すべての個体に共通してこの斑紋が見られました。
自分で捕獲したもの以外にも、書籍やSNSで見られる個体にも同様の斑紋が確認できるため、もしかすると新たなる同定形質たり得るかもしれません。
なお、背景が明るかったり、緊張状態になるとこの斑紋は消えるようです。
なので網で掬った直後や、明るい背景で飼育ケースに入れていると判別ができません。
生時かつリラックス状態であるときに現れ、死亡した場合は消えるようです。
標本にこの斑紋は残らないものと思われます。
野外で撮影、および飼育してはじめて判明した特徴になる、かと思います。
それでは今回はこの辺で。
次回の更新をお楽しみに!
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