どうも、サビぬきです。
今回は2025夏最大の遠征。
長崎県に、トウヨシノボリ西九州系をターゲットとして行ってみました。
また、対馬でも壱岐でも五島でもない島でヒラタクワガタを探し、陸封型と思わしきヨシノボリも採れ、ヨシノボリに興味の深い方々はおそらく知っているであろうU氏との対談もあり、大変充実した情報量の旅となりました。
なお、本来は3泊4日の予定だったのですが、台風の影響で当初の日程では欠航リスクが出てしまうという困ったことに。
ただ幸いにも、狙いのヨシノボリとクワガタを初日の夜までに最低限必要な数を確保できていたため、大事を取って1日予定を前倒し、2泊3日での遠征となりました。
短時間ながら全ての目的を達成できましたが、スケジュールはややタイトでちょいと忙しい旅になってしまいました。
1日目 初の長崎本土上陸
長崎県への遠征は、実は過去に何度か行っています。
しかし過去の遠征は、目的地が全て五島列島であったため、実は長崎県本土側に降り立ったのは初。
このとき関東地方に台風が迫っており、長崎での採集そのものには影響はなさそうなものの、帰路がちょっと不穏そうな感じのスタートとなりました。
しかも、飛行機の中でまさかの津波警報。
これは長崎県には影響なし、ということでしたが、なかなか騒々しいスタートです。

長崎に着地して、天気自体は快晴。
汗の噴き出る暑さです。
西九州系トウヨシノボリ
早速、googlemapで目をつけていた目的の川に着いてみると。

いるいる、うじゃうじゃいる……。
おそらく目的のヨシノボリと思わしき、小型のハゼがたくさん見えます。
早速掬ってみると。

あっさり採れちゃいました。
前情報では比較的大型になるグループと聞いていましたが、このポイントのものはいずれも3-4cm程度と小型でした。



正直、拍子抜けするほどたくさん採れました。

ケースに入れてみると。
おや?オスでも第一背鰭が丸いようです。





このエリアの集団は、第一背鰭が伸長し、大型化しやすいという前情報を得ていました。
しかし実際に採れた個体は、それとは全く異なる特徴を持った個体でした。
サイズに関しては、育てれば変わるかもしれませんが。
現地での水中写真もいくらか撮りました。
個体数が多いので比較的撮りやすいものの・・・とにかく暑い!
川の水温も、もはやぬるま湯といえる状態でした。
次に長崎に来ることがあれば、夏じゃないほうが良いかもしれません。



長崎県、西九州系のトウヨシノボリ。
暑い中、たくましく生きているようですね。
諫早湾へ
その後、昼食を取り、諫早湾に向かいました。
なお、今回採集した個体は、この諫早湾に流入する河川のものです。



諌早湾干拓事業は、農地を作るために海を堤防で締め切った国の事業です。
この堤防が諌早湾干拓堤防です。
漁業者は環境の変化によって魚が減ったと訴え、一方で農業者は堤防を開けることで塩害が起きることを心配しています。
関心のある方は、背景を調べてみるのもおすすめです。
西彼諸島へ
長崎県内には、大小様々な離島が数多く存在します。
中には橋で渡れる離島もあり、今回の遠征では、西彼諸島の島に宿を取っていました。
離島に宿を取った理由は、ヒラタクワガタを狙うためです。
長崎県の離島には、ヒラタクワガタの固有亜種として、ツシマヒラタクワガタ、イキヒラタクワガタ、ゴトウヒラタクワガタの3種が知られています。
昨年の遠征では、サブターゲットとしてゴトウヒラタを捕獲しています。
西彼諸島のものは本土側と同等の個体群とされており、つまるところホンドヒラタとなります。
今回は五島のものとのグラデーション的な個体群、ようするに中間型が疑われる個体群を入手したかった、という目的がありました。
そもそも、西彼諸島にヒラタクワガタが分布すること自体はわかっていますが、具体的な集団の特徴については、ほとんど記録がないようです。
今回は諫早湾のトウヨシポイント、陸封が疑われるルリヨシポイントから陸路でアクセス可能という条件も相まって、西彼諸島を選択しています。
そんなわけで島に向かい、樹液が出ている木と、クワガタが集まるであろう街灯の場所をチェックしました。
すると、早速残骸を発見。

大アゴも一般的なホンドヒラタに比べ、少し長いような気も?
狙いのヒラタクワガタの残骸です。
残骸があるということは、ここにはヒラタクワガタが生息しているという確実な証拠。
期待感が高まります。
いくつかめぼしいポイントを見つけて、夕食としました。


旅の目的のうち2~3割ぐらいはこのシマアジ料理が占めていた……かもしれません。
夜のクワガタ採集
夜、事前に目星をつけたポイントを見て回ります。
早速、40mm近くある大型のヒラタ♀を発見。
他のポイントはまだクワガタが出てきていませんでした。
街灯のポイントでは、カブトムシやノコギリクワガタが。
昆虫の生息密度は高いのかもしれません。


そし宿に戻ってくると、宿の灯りに誘われたのかヒラタ♂が。
初日にして、ペアが揃ってしまいました。

とても幸先の良い出だしです。
この日の採集はこれで終了!
2日目 島の散策とルリヨシノボリ
翌朝、少し島を散策してからルリヨシノボリを狙いに行きます。
クワガタ採集に関しては、朝にさらにヒラタを1ペア追加し、2ペアとなりました。
サブターゲットとしての昆虫採集に関しては、なかなかに上々です。

あとは、島の散策。




ダム湖上流の探索

一通り島の散策に満足したので、目星をつけていたダム湖上流に向かいます。

島を出るまではよかったのですが、途中で宿に忘れ物をするなど手際が悪くタイムロスが。
採集ポイントとしては、2箇所目星を付けていました。
前情報によると、少なくともどちらか片方には居るらしいのですが……。

最初に行ったポイントで採れたのはサワガニのみ。
2択を外したようです。
少しタイムロスとなりましたが、もう一方のポイントに向かいます。

このポイントにはヨシノボリがたくさん見られました。
シマヨシノボリ、ゴクラクハゼが優占しているようです。

そんな中。

狙いのルリヨシノボリ、採れました!
このポイントで採れるルリヨシノボリは、どの個体も見た目がどこか歪んでいました。

一応健康ではあるようなのですが……。
もしかすると、陸封化の影響なのかもしれません?
この後に予定が控えていたこともあり、このポイントでの採集は駆け足になってしまいました。
(残念ながらじっくり観察するには時間が足りませんでした)




このポイントではルリより多く見られました。よく見ると頬の斑紋が個性的ですが、ほかの個体はどうだったか。
じっくり見ている時間がなかったのが残念。

ルリヨシノボリがメインターゲットでしたが、このポイントでは3種採れました。
ダム湖の上流という生息環境だけに、おそらく陸封型となるでしょう。
シマヨシノボリがよく見ると面白いことに後で気づいたので、いずれ再訪したいポイントです。
U氏との対談
ルリヨシノボリの採集を終えたあと、ヨシノボリ属魚類を最先端で研究されているU氏と対談する機会を作れたため、お会いするプランを組んでいました。
というのも、以前投稿したヨシノボリの写真が、過去に得られたいずれのサンプルとも異なるそうで。
そのサンプルの受け渡しについてやりとりしているタイミングで、たまたま偶然にも。
この日、長崎県内で都合つけられそうということになり、急遽対談が決まったものです。

詳細は省略しますが、
①今回ターゲットとした西九州系トウヨシノボリは、ルリヨシノボリと近い関係性がある。
②長崎県内の陸封型と思われるルリヨシノボリは、複数のポイントで得られている。
③信越地方某水系のトウヨシノボリはなんか変かも。詳細はまだ不明。
……といった感じのテーマをお話しました。
実に興味深いヨシノボリトークで、あっという間の1時間でした。
興味がある方は、次の資料を読んでみると良いでしょう。
最後にいつか、どこかのタイミングでガサガサしましょう!といった形で解散。
将来どこかで、サンプリングを兼ねた回としてブログにまとめることがあるかもしれません。
島への帰路
対談を終えて、島に戻ります。
いくつか目星をつけていた木をチェックするも、この日は空振りでした。

3日目 早期の撤退
この日の翌日、台風が関東地方に迫っており、もしかすると飛行機が飛ばないかも。
との航空会社からのメールが。
翌々日は仕事で、しかも人員配置の都合上、確実に帰宅する必要がありました。
しかしこの時点で、
- 西九州系トウヨシノボリ
- 陸封型ルリヨシノボリ(推定)
- 離島産ヒラタクワガタ2ペア
と、長崎県のターゲットとしていた生物はすべて採集済み。
できればもう少し数が欲しいところですが、このままの滞在はリスクがあり、一通り最低限の目的はすでに達成済みなので、早期の帰宅を決行することにしました。
朝にヒラタを1♀追加できた点は、ヨシ。

島から空港への移動までにはまあまあ時間を要し、意外と駆け足なプランでした。
本来は、もう1日ゆっくり採集する予定だったので残念です。
最後に寄ろうと思っていた、なんとかガラスの砂浜は見ることができました。


あとはレンタカーを返却するだけ……のところで、まさかのレンタカー屋を見失うという痛恨のミス。
荷物検査を通過して、なんとか離陸には間に合いましたが、着いたのはなんと離陸7分前。
ギリギリでした。
離陸までの時間ギリギリになってしまうのは、非常に良くないですね。
そんなわけで、長崎空港内で土産を購入し損ね、この点では課題の残る遠征となってしまいました。
そのうちリベンジしたいとは思います。
全部台風のせいだ。
あと、結局翌日の飛行機は無事飛んだそうです。
結果論とはなりますが……そうなるんだったら、もう1日粘れば良かったな!

最終日は駆け足。忙しい1日でした。
リザルト
トウヨシノボリ 西九州系
第一背鰭の伸長する大型化する集団 と聞いていましたが、実際に捕獲できたのは第一背鰭が伸長しないタイプでした。
ざっくり特徴としては、頭部の顔つきは上顎突出となるようです。
頬には赤い小斑点が入ります。オウミヨシノボリほど密ではないように見えます。

第一背鰭の伸長はなし。第二背鰭に縞模様。
これらの外観的特徴は、ほとんど東北産のトウヨシノボリと一致すると感じました。
もっとも、今回は1水系でしか採集できていないため、今後他の水系でも採集してみたいと思います。
あとこの集団、なんとなくなのですが背鰭の前方の鱗が少ない、あるいはない気がします。

今回は諌早湾干拓堤防の内側にある水系で採集しました。
次回があれば、干拓堤防の外側で狙ってみたいですね。

ルリヨシノボリ 推定陸封型
今回のもう一つの目的。
ダム湖上流で捕獲した個体です。どの個体も不自然な歪みが見られました。
このポイントで採れた個体は、部分的に脱色が見られるのも特徴的と思いました。

ホンドヒラタクワガタ 西彼大島産

採集記録の少ない、西彼大島産のヒラタクワガタです。
今回、西彼諸島のものを狙った理由は次の通りです。
①地理的に五島列島と近い位置にあること。
②大村湾または諌早湾から陸路でアクセス可能な離島であること。
以上2点の理由があります。
前年、福江島にてゴトウヒラタの採集に成功していたため、今年は本土産との中間系の可能性がある、西彼諸島産を狙ってみた という形になります。
実際、今回の採集の過程で大型個体の死骸を見つけました。
この死骸からは大顎が伸長する傾向が見られたため、ゴトウヒラタとの関連性も伺えるかもしれません。
なにより、西彼諸島産は情報が少なく不明点が多いです。
だからこそ、明らかにする価値があると考えました。
ひとまず採卵には成功しました。
結果は来年、羽化してみてのおたのしみ、ですね。

主に台風のせいで消化不良気味に終わった2025長崎遠征。
またいつかリベンジしたいところです。
今回の遠征記録はここまで。
次回の更新をお楽しみに!

























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