ビワヨシノボリの特徴
ビワヨシノボリは、琵琶湖関連水系に分布する滋賀県固有のヨシノボリです。
本種の♂は各ヒレが非常に長く伸長します。
本種は普段、琵琶湖の水深の深いエリアに暮らしており、初夏になると産卵のため一斉に浅瀬に上がってくるようです。
例年、5~7月頃が、本種を観察しやすい時期となります。
野生下では繁殖行動を終えるとそのまま死んでしまうようですが、飼育下では繁殖期を過ぎてもその後2~3年と結構長生きすることがあるようです。
♂の第2背ヒレは熱帯魚でいう”ロングフィン”タイプのように伸びます。
野生下では♀を引き付けるために役立っているのかもしれません。
飼育下では長く伸び続けます。
本種の存在は古くから知られていましたが、新種記載がなされたのは2017年です。
琵琶湖近辺で見られるヨシノボリは本種かオウミヨシノボリのどちらかです。
好む生息環境に違いがあるようで、現地ではある程度棲み分けがなされています。
オウミヨシノボリは大多数が河川を中心に分布するのに対し、本種は基本的に湖内を中心に分布します。
接岸時期には湖岸の至るところで見られますが、時期を過ぎるとぱったりと姿を消します。
本種は本来、滋賀県固有種ですがいくつか種苗放流に混じって拡散している地域があるようです。
事実、筆者も滋賀県以外で採集した経験が1例あります。
基本情報
学名 | Rhinogobius biwaensis |
記載 | Takahashi et Okazaki,2017 |
サイズ | ふつう全長3~4cm程度。 |
食性 | 雑食性。やや肉食傾向で、水生昆虫が主食と思われます。 |
生息環境 | 主に琵琶湖内に生息します。普段は奥深くに暮らしています。 5~7月にかけて産卵のために一斉に湖岸に接岸します。 この時期であれば非常に数多くの個体が見られます。 時期を外すとぱったりと姿を消します。 一部に河川残留型と思われる集団がおり、これらは一年中見られるようです。 |
生活史 | 陸封型 |
卵形 | 小卵型 |
項目 | 評価 | 備考 |
---|---|---|
見つけやすさ | 2 | 琵琶湖固有種です。 時期が合えば容易です。 時期以外は難しいです。 |
捕まえやすさ | 4 | 見つければ捕まえられます。 |
飼育しやすさ | 3 | 標準的な設備で容易に飼育できます。 |
餌付きやすさ | 3 | 人工餌にもすぐ餌付きます。 |
気性の荒さ | 4 | やや気が荒く、混泳の際は要注意です。 大きな鰭が傷みやすいので注意。 |
備考
本種は基本的に湖内に分布し、5~7月頃だけ湖岸に出現する というのものが基本です。
しかし、一部は河川内で通年生息する集団の存在も知られています。
分布域は重複しないものの本種の形態はシマヒレヨシノボリと酷似しており、特にメスは瓜二つです。
背鰭の前方が鱗で覆われるか否かで区別できますが、基本的に小型個体となるため区別は難しいです。
またオウミヨシノボリほど広域ではないと思われるものの、一部では移入報告例があります。
移入先では交雑問題が発生したりと、悩ましい一面もあるようです。
琵琶湖名産のごり(「うろり」とも)の佃煮は、本種を用いて作られます。
ごりの佃煮は滋賀県の美味しい湖魚料理の一つでもあるので、一度食してみても良いでしょう。
佃煮は道の駅などで購入できると思います。
ビワヨシノボリの見分け方
ビワヨシノボリと判断する場合に見るべきポイントは次の通りです。
チェック1
チェック2
チェック3
背鰭前方の鱗を見ます。
無鱗です。
ビワヨシノボリの自然分布域には、基本的にオウミヨシノボリ以外のヨシノボリがいないはずです。
上二つの特徴を見ても判断できないときに、用いると良いでしょう。
ビワヨシノボリは頬に斑点がなく、♂は各ヒレが伸長する点が最大の特徴です。
生息域の関係上、基本的にはオウミヨシノボリか本種かの2択で判断になります。
第1背鰭の前方に鱗が無い点も特徴です。
琵琶湖に流れ込む水系で、頬に斑点がないヨシノボリ が捕れた場合、概ね本種と考えて良いでしょう。
♂は一見して区別できますが、♀はよく似ています。
左がオウミヨシノボリ、右がビワヨシノボリ。
オウミヨシノボリ | ビワヨシノボリ | |
顔つき | 上アゴ突出 | 下アゴ突出 |
頬の模様 | 赤い斑点が入る | 無地 |
琵琶湖沿岸で採集されたものであればほとんど本種ですが、琵琶湖接続水系であっても琵琶湖から離れた河川の上流域の場合は、似た特徴を持つカワヨシノボリである可能性もあります。
ただしビワヨシノボリでは全く斑点が見られないため、この点で区別は容易です。
顔つきも合わせて確認し、下アゴも突出するようであれば本種と判断して良いでしょう。
琵琶湖沿岸域でヨシノボリが採れたとき、基本的にはオウミヨシノボリかビワヨシノボリの2択です。基本的には顔つき(上あごと下あごがとちらが突き出すか)と、頬の模様の2点で見分けると良いでしょう。
もしどちらか悩むような個体の場合、大抵はオウミヨシノボリだと思います。
ビワヨシノボリとのオスとメス
ビワヨシノボリの分布
基本的に琵琶湖固有種ですが、放流などに混じる形でか一部の県に移入例が知られます。
移入先の在来種となるトウカイヨシノボリやシマヒレヨシノボリとの交雑が心配されています。
移入先では琵琶湖産より大型化する傾向があるようです。
ギャラリー
琵琶湖 湖内集団
最も標準的なビワヨシノボリです。
5~7月にかけて、大量に湖岸に接岸します。
発生の度合いは、年やポイントによって多少ばらつきはあるようです。
河川集団
ビワヨシノボリは一般的に湖内に生息し、繁殖期にのみ接岸するとされますが、一部、河川に通年生息する集団がいるようです。
実際に、河口より1km以上離れた河川で捕獲した個体を掲載します。
掲載個体は5月に捕獲した個体ですが、湖内の集団とは異なり雌雄判別が困難なほど、まだ婚姻色があらわれていません。
このことから、繁殖期が湖内の集団とはずれているのかもしれません。
流れは緩めですが、流水環境にて採集。
移入集団
本種は本来琵琶湖固有種ですが、いくつかの県で移入例が知られます。
静岡県で採集した個体を掲載します。
このポイントでは季節に関係なく、通年採れるようです。
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