トウカイヨシノボリの特徴
トウカイヨシノボリは、濃尾平野を中心に分布するヨシノボリです。
岐阜県、愛知県の小川や溜め池を中心に分布する、濃尾平野周辺地域の固有種です。
三重県にも生息しています。
多くのヨシノボリ類では赤い目のV字バンド模様が、本種では黒みを帯びるのも特徴です。
本種の分類には紆余曲折あったようですが、シマヒレヨシノボリと同じタイミングで2017年に正式に新種記載されました。
本種は正式に新種記載される前、「ウシヨシノボリ」の通称で一部では存在が知られていました。
今でもこの名称の方がしっくりくるという方も、もしかすると居るかもしれません。
本種は日本のヨシノボリとしては最も小型です。
成長しても全長4~5cm程度のものがほとんどです。
基本情報
学名 | Rhinogobius telma |
旧名 | ウシヨシノボリ(Rhinodobius sp.“TO”) |
記載 | Suzuki, Kimura and Shibukawa,2019 |
サイズ | ふつう全長2~4cm程度。 |
食性 | 雑食性。やや肉食傾向で、水生昆虫が主食と思われます。 |
生息環境 | 流れの緩い河川や水路、溜め池を好んで生息します。 魚が棲んでいるのか疑わしいほど汚濁した水にも生息することがあるようです。 強い水流は苦手なようで、流れのある河川ではほとんど見られません。 |
生活史 | 陸封型。 一生を河川または溜め池で過ごします。 |
卵形 | 小卵型 |
項目 | 評価 | 備考 |
---|---|---|
見つけやすさ | 1 | 東海地方固有種です。 生息地は限られるようです。 |
捕まえやすさ | 5 | ポイントでは多産することが多いです。 見つけられれば、捕獲は容易です。 |
飼育しやすさ | 3 | 標準的な設備で容易に飼育できます。 |
餌付きやすさ | 3 | 人工餌にも餌付きます。 |
気性の荒さ | 3 | 小型種ですがやや気が荒めです。 同種どうしは小競り合いが起きやすい模様。 |
トウカイヨシノボリの見分け方
トウカイヨシノボリと判断する場合に見るべきポイントは次の通りです。
チェック1
顔つきを見ます。
下あごが突出します。
チェック2
目の間に入る黒いバンドが、他のヨシノボリに比べるとやや黒みを帯びます。
(赤黒い感じです。)
チェック3
背鰭に二本、黒いラインが入ります。
(♀の方が見やすいです。)
トウカイヨシノボリは下アゴが突出し、目のV字バンドは黒みを帯び、背鰭の二重線が特徴的なヨシノボリです。
生息域は限定的ですが、ポイントでの個体数は比較的多い傾向に思われます。
流水環境よりは止水域を好み、やや淀んだ環境のほうが本種にとっては心地よいようです。
かなり濁った、いわゆる ”ドブ” のような水路でも見られることがあります。
小さな見た目に反して縄張り意識が強く攻撃性は高いです。
このため、水槽内ではあまりたくさん飼えないようです。
本種はビワヨシノボリやシマヒレヨシノボリに似た印象を持ち、実際に一部地域ではシマヒレヨシノボリやビワヨシノボリなどとの交雑例が知られているようです。
ただし、本種はシマヒレヨシノボリやビワヨシノボリよりも、遺伝的にはカワヨシノボリと近い関係にあるようです。カワヨシノボリとの共通祖先から分岐し、濃尾平野で特有の進化を遂げたものが本種 なのかもしれません。
本種はカワヨシノボリ同様陸封型ですが、卵径は小さく、「小卵型」となるようです。
トウカイヨシノボリのオスとメス
♂個体
第1背鰭の先端は尖りません。
♀よりも模様が濃く入る傾向があります。
♀個体
♀も第1背鰭の先端は尖らず、丸いです。
♀の方が腹部の白い面積が若干広いです。
本種の雌雄はかなり見分けにくい部類に入ると思います。
雌雄ともに背鰭が丸く、形状は瓜二つです。
色の濃さと腹部の白い面積でおおよそあたりはつけられますが、それでも難易度は高いと言えます。
トウカイヨシノボリの分布
濃尾平野を中心に生息しますが、どこにでも分布するわけではないようです。
流れが緩い環境を好み、溜め池やそれに繋がる水路が主要な生息域になるようです。
流れの速い河川には基本的に見られないようです。
トウカイヨシノボリの採集難易度
★★★ 難しい
分布は局所的です。
居るところでは多産しますが、流れの緩い河川や溜め池であれば居るという訳でもないので、難易度は高めです。狙わないと採れないと思います。
トウカイヨシノボリの飼育難易度
★★★ 難しい
小型のわりにやや神経質な印象があり、攻撃性が高いです。
強い水流を好まないようであるため、流れの緩いフィルターを使用すると良いかもしれません。
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