どうも、サビぬきです。
前回の福井編を切り上げ、夕方に琵琶湖に到着。
今回は琵琶湖編をお送りします。
とはいえ、到着したのはすでに夕方。
しかし、ギリギリいくつか魚の撮影には成功しました。
すでに暗くなってしまっていて映りは悪いですが。
前回、最後に載せた画像に移った魚の正体は、「ビワヨシノボリ」と「ウツセミカジカ」でした。
ヌマチチブとビワヨシノボリは比較的湖岸でよく見かけますが、ウツセミカジカは少し珍しいかもしれません。河川ではよく見ます。
今回のターゲットであるビワヨシノボリも思わぬポイントで早速発見するこができました。
幸先の良いスタートです。
やはり、この時期は琵琶湖であればほぼ全域に接岸しているのでしょう。
目的のポイントではないので、ここの個体はスルー。
明日明るくなってから、目的のポイントで採集を行います。
晩飯
とりあえず、ラーメン。
柚子塩が、疲れた身体に染み渡る。
翌朝の採集 ビワヨシノボリ編
目的に到着しました。
さて、ここからが本番です。
琵琶湖の湖岸はどこもだいたいこんな感じだと思います。
すでに結構な個体数が目視できているので、たぶん簡単に採集はできるでしょう。
採集する前に、ちょっと湖岸にカメラを沈めてみました。
さっそくいました。
いたるところに居ます。
ビワヨシノボリは琵琶湖固有種ですが、時期を選べばかなり高確率で会えると思います。
採集時期が重要で、5月に出現し始め、6月にピークを迎えます。
7月中旬までは見かけるものの、それ以降の時期になるとだんだんと姿を消すようです。
したがって、ビワヨシノボリの採集には、時期が最重要 と言えます。
それでは、網を振るってみましょう。
そこら中に目視できるので、捕獲は容易です。
そこら中に居るので、網を振るえば立て続けに次々と入ります。
このポイントはオウミヨシノボリが良く混じるポイントなのですが、今回は全てビワヨシノボリでした。
そこら中、ビワヨシノボリだらけ。
♂は婚姻色が出ており、鮮やかな黄色と青がよく目立ちます。
これは採集直後でないとなかなか見られない彩度です。
サクッとこれだけ採れました。
これだけたくさん採れるのは、近年でもなかなかの好コンディションだったのでしょう。
このポイントには今まで何度かビワヨシノボリの採集に赴いたことはあったものの、これだけ採れたのは初めてでした。
ただ、こんなにたくさん持ち帰っても仕方ありません。
適当に選別して次のポイントに向かいます。
もう一つの固有種 オウミヨシノボリ編
続いて、とある小河川に向かいます。
琵琶湖の河口より1km以上離れており、以前立派なオウミヨシノボリを採集したことがあるポイントへの再訪です。
早速網を振るってみましょう。
今日のコンディションは、透明度は高く流れは緩い といった状況でした。
早速、ウツセミカジカが入りました。
カジカ類は一般的に流れが強い河川を好みますが、ウツセミカジカに関しては比較的流れが緩い河川でも見かけます。
琵琶湖では湖岸よりも河川で多く、さほど珍しい種類ではないようです。
続いて網に入ったのは、婚姻色マックスのゼゼラ。
普段はもう少し黄色味を帯びていますが、この時期採れるものはギラギラの銀色に仕上がっています。
モツゴも似たような色を示しますが、モツゴは口が前向きにつくのに対し、ゼゼラは下向きに口が付く点で区別できます。
そして待望のヨシノボリが網に入ります。
これが、オウミヨシノボリ です。
先ほどのビワヨシノボリに非常によく似ていますが、頬の部分に着目してみましょう。
見分けてみよう ビワvsオウミ
先ほどのビワヨシノボリは頬が無地でしたが、オウミヨシノボリでは頬に比較的目立つ赤い斑点 が入るのが特徴です。
ビワヨシノボリの繁殖期であれば、婚姻色やヒレの伸長具合が全然違うので♂個体は比較的まだ見分けやすいものの、♀はこの方法での区別は難しいです。
♂個体でも、婚姻色が出ていない個体には使えません。
このため、どんな状況であっても見分けられる特徴として、頬で見分けるのが良いでしょう。
頬の赤い斑点のほかには、顎の付き方でも見分けることができます。
真横を向いたときにオウミヨシノボリは上顎が突出するのに対し、ビワヨシノボリは下顎が突出します。
頬で区別が難しい場合
オウミヨシノボリの若魚の場合、頬の赤い斑点がまばらでまだ十分に見られない場合もあります。(全くないことは稀だと思います。1個でもあればオウミと判定して良いでしょう。)
もし頬で見分けにくい場合は、顎の付き方を見ると良いでしょう。
琵琶湖水系では両種とも採れる可能性がありますが、この点で識別が可能です。
基本的にはこの2種しか居ないため、琵琶湖水系産に関してはこの判別方法だけ覚えれば、ほぼ正しく判別できます。
オウミヨシノボリは琵琶湖産鮎(コアユ)の放流に混入するなどの形で全国各地に非意図的に移植されてしまっている 可能性が指摘されています。
事実、私も群馬県で本種と思わしき個体を採集したことがあります。
・頬に赤い斑点が密集する
・上あごの方が前に突き出る
・♂の第一背鰭が伸長する
琵琶湖水系産以外でも、上記の特徴をすべて持つトウヨシノボリ系の個体は本種の可能性がある 点を念頭に置くと良いでしょう。
赤い斑点は密集しなくとも、まばらに見られる個体もいます。
それらはもしかすると、本種と現地のトウヨシノボリとの、交雑個体かもしれません。
(ただし、本当に交雑かどうかは遺伝子を調べないと分かりません。)
予想外のヨシノボリ
しばらくこのポイントでガサガサを続けていると、予想外のヨシノボリが網に入ります。
このポイントは流れが緩やかな河川なのですが、ビワヨシノボリが網に入りました。
河口から1km以上離れており、複数個体採れたので迷いこんだ個体 にしては数がやや多いように見えます。
ビワヨシノボリは5月までは琵琶湖の奥深くで暮らし、5月になると一斉に接岸、7月中旬を過ぎるとだんだんと姿を消し、また翌年5月になると現れる というものが一般的な生態です。
しかし、一部の河川で通年生息する集団 の存在が知られています。
これがきっとその河川集団 なのでしょう。
この河川で採集できた個体には、湖岸にたくさん見られる個体のような色鮮やかな婚姻色はほとんど出ていませんでした。
婚姻色が出ていない状態では雌雄の区別は難しく、画像の個体が辛うじて色付いている程度です。このことから、もしかすると湖内集団と河川集団では繁殖期がずれている 可能性があるかもしれません。
本当に河川集団かどうかは、8月以降にまた採集できるかどうかで分かることでしょう。
晩夏になったら、再訪してみようかなと思います。
リザルト
今回採集できたヨシノボリは次の通りです。
滋賀県にはほかにカワヨシノボリも生息していますが、琵琶湖よりは遠く離れた河川の上流域が主な分布となります。
したがって、今回の遠征で琵琶湖水系に分布するヨシノボリは完全制覇と言っても良いでしょう!
昼食
琵琶湖特産のスジエビのかき揚げが乗った、鴨そばをいただきます。
かき揚げの素材であるスジエビも今回の採集ではたくさん採れました。
先ほど河川で採れたヨシノボリの写真にも、実はスジエビが映り込んでいます。
琵琶湖ではヨシノボリも食材にする食文化があります。
ごり(うろり)の佃煮として、水産加工品として販売されています。
ごりの佃煮は道の駅などで買うことができると思います。
ビワヨシノボリは琵琶湖固有種としてだけでなく、地域の食文化を支える存在でもあるのです。
さて、これにて琵琶湖での採集は終了。
帰路に着きます。
おまけ -トウカイヨシノボリ-
帰るついでに、道中で寄れそうだったのでトウカイヨシノボリのポイントにも再訪してみることにしました。
以前採集したポイントは、個体数は多いものの、栄養状態が悪いのか小型個体ばかりだったのが印象的でした。
このため、そのポイントに接続する河川で、もう大型の個体が生息するポイントがあるのでは?と推測し、網を入れてみることにしました。
以前のポイントに接続する河川は、入ってみるととても浅い川でした。
しかし、川岸に草むらがあります。
草むらをガサガサしてみると・・・
読み通り採れました。
トウカイヨシノボリ です。
読みは当たりました。
どこにでもいるわけではないが、居るところには密集して居る というのが、本種の印象ですね。
これで今回の採集紀行はおしまい。
帰宅時には日付を超えてしまい、”2泊4日”の長旅はこれにて幕を閉じたのでしたー。
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