ケンムンヒラヨシノボリ

ケンムンヒラヨシノボリ 鹿児島県 種子島産

ケンムンヒラヨシノボリの特徴

ケンムンヨシノボリは、大隅諸島、奄美諸島、沖縄本島にかけて分布するヨシノボリです。

本種は従来「ヒラヨシノボリ」とされていましたが、2020年に沖縄本島を境に南北で別種として区別できることが判明しました。
その結果、沖縄本島以北のものが本種と記載されました。
八重山諸島に生息するものは別種として「ヤイマヒラヨシノボリ」として記載されました。

本種は大隅諸島(屋久島、種子島)、奄美諸島(奄美大島、徳之島)、沖縄本島の渓流域に生息しており、強い流れを好むようです。

かつて南黒色大型と呼ばれていたこともあり、本州でいうオオヨシノボリに近縁な種であると思われます。琉球版オオヨシノボリといった印象の種です。

急流に適応してか扁平な体型をしており、これが名の由来となったようです。
「ケンムン」は奄美地方の伝承にある妖怪に由来しています。

他に、頬の赤いV字模様が著しく太い点も特徴です。
2020年まで同種とされた「ヤイマヒラヨシノボリ」とは、背鰭の配置で識別可能です。

ヤイマヒラヨシノボリとケンムンヒラヨシノボリは同所的に生息しません。
オオヨシノボリも同所的に生息しません。

同所的に生息する種の中で、紛らわしい種としてはクロヨシノボリが挙げられるでしょう。

本種は目の赤いV字バンドが他種に比べ著しく太いこと、胸鰭の黒い斑紋が三日月状ではなく刻点状である点で区別が可能です。

見分け方のコツ!
  • 本種は大隅諸島、奄美諸島、沖縄本島の固有種です。
    かつては「ヒラヨシノボリ」とされていました。
  • 八重山諸島に分布しているものは「ヤイマヒラヨシノボリ」です。
  • 全体的な雰囲気はオオヨシノボリによく似ています。
    やや扁平な体型をしており、これが「ヒラ」の由来です。
  • 東部の赤いV字バンドが他種に比べ著しく太く目立ちます。
  • オオヨシノボリ同様の胸鰭の黒点を持ちます。
  • 流速のある河川上流部に生息しています。

基本情報

学名Rhinogobius yonezawai
旧名ヨシノボリ南黒色大型、ヒラヨシノボリ(Rhinogobius sp.”DL”)
記載Suzuki, Oseko, Kimura and Shibukawa, 2020
サイズ全長8cm程度?
食性雑食性?
水槽内では水草を食べる様子も確認できました。
生息環境離島の渓流域、河川上流部に生息します。
本州でいうオオヨシノボリが好むような河川を好む傾向があるようです。
瀬にも淵にも生息し、小型個体は瀬、大型個体は淵を好むようです?
生活史両側回遊型。成魚は河川に生息し、河川で産卵します。
孵化した稚魚は海に下り、ある程度成長するとまた河川に戻ってきます。
卵形小卵型
ケンムンヒラヨシノボリ 評価
項目評価備考
見つけやすさ1南西諸島の急流域に分布します。
捕まえやすさ1素早い上、川の流れも速いところに多いです。
アクセスも悪いことが多く、上級者向け。
飼育しやすさ3標準的な設備で飼育可能です。
餌付きやすさ3人工餌にも餌付きます。
気性の荒さ5他種との混泳は難しいかも。
攻撃性はかなり高い様子。
ケンムンヒラヨシノボリの生息環境

運よく淵に居る個体を見つけられれば採集は容易ですが、基本的には流速のある早瀬を中心に生息しています。
早瀬での採集は、それなりの経験値を要求されると思います。

南西諸島の渓流域に分布します。
この時点でアクセス難易度高め。
渓流の淵にひっそりと。
小型個体は瀬に、大型個体は淵にいることが多い気がします。

ケンムンヒラヨシノボリの見分け方

ケンムンヒラヨシノボリと判断する場合に見るべきポイントは次の通りです。
本種は屋久島、種子島、奄美大島、徳之島、沖縄本島の固有種です。

それ以外の地域で採れた場合は、本種ではない可能性が高いです。

チェック1

胸鰭の黒点に注目します。
オオヨシノボリと同じ特徴です。

南西諸島にオオヨシノボリは分布していません。
屋久島、種子島、奄美大島、徳之島、沖縄本島のいずれかで採れたもので、この黒点があれば本種です。

チェック2

目の間の赤いV字バンドに注目します。
他種に比べ著しく太いので区別は容易です。

ヤイマヒラヨシノボリも同じ特徴を持ちますが、分布域が被りません。

屋久島、種子島、奄美大島、徳之島、沖縄本島のいずれかで採れたものであれば本種です。

チェック3

成熟した♂の背鰭を寝せると、第2背鰭に到達します。

ヤイマヒラヨシノボリは到達しない点で識別できます。

確実に同定しよう

鹿児島県、沖縄県では本種に類似する「キバラヨシノボリ」が条例で採集が禁止されています。

キバラヨシノボリは屋久島、種子島には分布していませんが、奄美大島、徳之島、沖縄本島には分布しています。同所的に生息する河川も、もしかするとあるかもしれません。

ケンムンヒラヨシノボリは急流域に生息すること、かなり大型になること、赤いV字バンドが極太であることなどから比較的特徴が明瞭なので間違えにくいとは思いますが、採集する場合は確実に同定しなければなりません。


ケンムンヒラヨシノボリのオスとメス

♂個体

種子島産 ♂

♂は赤いV字バンドがとにかくよく目立ちます。
また、顔つきもやや長めです。

若い個体など、V字バンドでの判別が難しい場合は胸鰭を見ると良いでしょう。
オオヨシノボリに似た黒点があれば本種です。

♀個体

種子島産 ♀

♀はV字バンドの太さが控え目なことがあります。
顔つきも♂に比べると短い個体も居るようです。

それでも胸鰭の黒点は共通して良く目立つので、他種との識別は容易です。


ケンムンヒラヨシノボリの分布

分布域

鹿児島県(屋久島、種子島、奄美大島、徳之島)、沖縄県(沖縄本島)

※鹿児島県本土側には分布しません。

鹿児島県、沖縄県にのみ分布する離島限定のヨシノボリです。
沖縄県ではかなり珍しいようで、鹿児島県の離島の方が見つけやすいかもしれません?

分布状況に関しては不明点が多い種ですが、本種に細分化される以前「ヒラヨシノボリ」の時点では純絶滅危惧(現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種)という判定を受けていたようです。

沖縄県での採集難易度はかなり高いらしく、絶滅危惧1A類とされているアオバラヨシノボリよりも出会いにくいかもしれません。(※アオバラヨシノボリは2021年以降採集禁止)

離島に行かないと採集できない時点で、極めて敷居の高いヨシノボリです。

本種を採集する場合、離島採集になる関係上、短い日程で天候が良い日を引き当てることも重要なので、運も絡みます。

採集する場合は相応の下調べと覚悟、装備が必要です。

また本種の採集は禁止されていないものの、奄美大島、徳之島、沖縄本島では、採集禁止に指定されているキバラヨシノボリが同所的に生息する可能性があります。

この2種は間違えにくいと思いますが、確実に同定しなければならないという意味でも、敷居は高いと言えるでしょう。

ケンムンヒラヨシノボリのみを目的とする場合、キバラヨシノボリが分布しない「種子島」か「屋久島」がよいかもしれません?


ギャラリー

極太の赤いV字バンドは水中でも良く目立つので、他種との識別は意外と容易です。

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