
カワヨシノボリ富士型の特徴
カワヨシノボリ富士型は、山梨県と静岡県の一部地域にのみ分布するカワヨシノボリの一型です。
基本的な事項はカワヨシノボリに準じます。
広域分布する無斑型と外見が似ますが、背鰭が伸長しないことがポイントです。
背鰭の伸長が見られない種は止水域を好むことが多いものの、本種は一般的なカワヨシノボリ同様流速のある河川や用水路で見られます。
報文によると、富士型は今のところ”表現型を厳密に定義しない“とされています。
基本情報
学名 | Rhinogobius flumineus |
サイズ | ふつう全長4~6cm程度。 |
食性 | 雑食性。やや肉食傾向で、水生昆虫が主食と思われます。 |
生息環境 | 広域分布する無斑型同様です。 河川中~上流部に主に生息します。 やや流速のある環境を好み、止水にはあまり生息しません。 |
生活史 | 陸封型 |
卵形 | 大卵型 |
項目 | 評価 | 備考 |
---|---|---|
見つけやすさ | 1 | 分布域がやや限られています。 見つけにくいかもしれません。 |
捕まえやすさ | 5 | 簡単に捕まえられます。 |
飼育しやすさ | 2 | 飼育難易度は高めです。 |
餌付きやすさ | 3 | やや餌付きにくい傾向があります。 最初は冷凍赤虫で慣らすと良いです。 |
気性の荒さ | 2 | ヨシノボリにしては比較的おとなしめです。 |
カワヨシノボリは一般に飼育環境にあまり細かい指定がなく、比較的適当に管理しても長生きしてくれる種です。
しかしながら、富士型に関しては例外となる様子。
どうも、水質を意識しないと飼育難易度が高めとなるようです。
はじめ他のヨシノボリと同様に飼育しても、富士型だけは3ヶ月程度で気づけば全滅、ということも珍しくありませんでした。
数回飼育して富士型のみがうまくいかないので、現地の水質を測ってみたところ、なんとpHは8.5を記録。
これは日本の河川としては、比較的高めの値となります。
pHを高める手段として、私は園芸用に市販されている「琉球石灰岩」を追加してみたところ、以降安定的に飼育できるようになりました。
このように生息河川のpHが高い傾向があるためか、飼育の際は水質を意識しないと短命に終わることが多いように思えました。
石灰岩を追加するなど、pHを高めに保つ工夫を施すことで安定的に飼育できるようです。
私の飼育経験上、富士型は他のヨシノボリに比べると水質の悪化などにも弱いようで、明らかにデリケートな印象があります。(富士型以外はとても丈夫だと思います。)
餌付けに関しても、他のカワヨシノボリは人工飼料を与えればすんなり食べてくれることが多いのですが、富士型に関しては警戒心が強いのかあまり食べてくれません。
基本的には、冷凍赤虫から徐々に慣らしていくよう、餌付けが必要に思えます。
加えて他のヨシノボリと混泳させると、負けてしまいがちなようです。
本型を飼育する際は、単独での飼育がおすすめです。
カワヨシノボリ富士型の見分け方
まず本型は山梨県と静岡県に固有です。
それ以外の地域には分布していません。
基本的な判断は、カワヨシノボリに準じます。
♂の第一背鰭は伸長しません。
また尾柄部に橙色斑が入ることがほぼありません。
赤系の発色が弱く、全体的に渋めの発色が特徴です。
カワヨシノボリ以外の他種との識別に関しては、胸鰭の分枝軟条を数えればOKです。
17本以下であれば、少なくともカワヨシノボリであることは判別可能です。
山梨県で見られるカワヨシノボリは全て本型と思われます。
静岡県で見られるのは一部地域となります。
吉郷英範,分布域東限に生息するカワヨシノボリ(硬骨魚類綱:スズキ目ハゼ科)の形態,比和科学博物館研究報告 第52号 別冊,2011
※より詳しい特徴は上記報文の「記載」を参照すると良いでしょう。
カワヨシノボリ富士型のオスとメス
カワヨシノボリ富士型の分布

山梨県、静岡県
※静岡県では全域ではなく、一部地域にのみ分布します。
ギャラリー
すべて山梨県で採集した個体です。






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