気を付けよう!身近に潜む特定外来生物

どうも、サビぬきです。

ヨシノボリを採集していると、ヨシノボリではない生き物が一緒に採れることがあります。
一緒に採れた生き物は一緒に持ち帰って飼育してみるのも面白いものですが、中には法律で飼育が禁止されている生き物がいます。

法律で飼育が禁止されている生き物の括りとしては、主に「天然記念物」「種の保存法指定種」「特定外来生物」の3つが挙げられます。

このうち前2つは分布域が局所的ですが、「特定外来生物」に関しては全国どこにでも分布が見られ、遭遇する機会も多いです。

今回は、ヨシノボリを採集していると一緒に遭遇しうる、全国どこでもよく見かける「特定外来生物」について紹介しようと思います。

よく見る特定外来生物4種

特定外来生物とは

外来生物のうち、農業及び水産業、または在来種の生態系に甚大な悪影響を及ぼす可能性が高いとして、環境省に種単位で指定された生物です。

わかりやすく言えば外来生物の中でも特段の悪影響が懸念されるため、「お前はダメだ!」と、環境省から名指しで指定されてしまっている生物です。

これらの生物は、「生きた状態での移動」「飼育」法律で禁止されています。
間違っても持ち帰ってはいけません。

そして、それだけ取り扱いには慎重になるべき生き物ですが、種類によっては全国的に身近に見られるものも、実は多いです。
誤って持ち帰ると法律違反になってしまいますので、採集現場で必ず見分けなければなりません。

このことからも、種類がよくわからない生き物は持ち帰るべきではない!と言えますね。


よく見かける特定外来生物

ヨシノボリの採集中にも、特定外来生物と遭遇することはよくあります。
日本どこでも全国的に、ふつうに遭遇しうる、身近な特定外来生物を紹介します。

カダヤシ

カダヤシ♂
カダヤシ♀

メダカに非常によく似た魚です。

顔つきや体形はメダカにそっくりで、都市河川や公園などの小川にも普通に生息しているので注意が必要です。

メダカと間違えて持ち帰ってしまうリスクが高く、危険な魚です。

メダカとの区別は尻鰭を見ると一発です。
メダカは台形をしていますが、カダヤシは♂なら尻鰭が細く尖り、♀ならうちわ型をしています。

メダカと違って卵胎生という繁殖生態を持ち、卵ではなく稚魚を直接出産します。

カダヤシ♀ さいたま水族館で撮影
カダヤシ♂ さいたま水族館で撮影
本物のメダカはこちら
こちらがメダカ。尻鰭の形状に注目しましょう。
メダカとの識別

メダカとの識別は、尻鰭に着目するのが一番簡単です。
極端な話、カダヤシを間違えて持ち帰ると犯罪者になってしまいます。

尻鰭を見れば比較的容易に見分けられますので、尻鰭を見て見分けましょう。

カダヤシ♂(持ち帰り不可)
尻鰭が細く尖ります。
カダヤシ♀(持ち帰り不可)
尻鰭は丸くうちわ状です。
メダカ(持ち帰り可)
尻鰭は台形をしています。
♀は♂に比べ小さくなります。
(画像は♂)

ブルーギル

アクアマリンいなわしろカワセミ水族館で撮影

北米原産の外来魚です。
淡水魚ですが、海の魚のような外見をしています。

極めて悪食な上、繁殖力も強いので在来種を捕食する形でその存在を脅かしています。

最大の特徴はエラ蓋にある黒~濃紺色の大きな斑点です。
ブルーギル青い鰓の名はこの特徴に由来しています。

さいたま水族館で撮影。
エラ蓋の先端に着目。この濃紺の突起が名前の由来です。
釣りでもよく釣れます。むしろ釣れる魚がブルーギルしかいないような池も、時折遭遇します・・・。
小型個体はこんな感じ。特徴となる鰓蓋の青い突起はまだ出ていないので注意が必要です。


タイのような顔つきや形をしている淡水魚で、種類が判別できないものは生息範囲的にブルーギルの可能性が高いです。基本的に持ち帰らないほうが無難です。

ブルーギルは外来魚の中でも屈指の捕食圧があります。

特定外来生物のキャッチアンドリリースは禁止されていませんが、ブルーギルに関しては、地域により条例でキャッチアンドリリースも禁止されている場合もあります。

例えば滋賀県では県条例により、生きた状態でのリリースは禁止されています。
当然、キャッチアンドリリースも禁止です。

本種に関しては生態系の影響度を考えると、可能であれば捕獲したその場で捕殺が理想的と考えます。

外来魚回収BOX(イメージ)
滋賀県では、捕獲した特定外来魚はここに入れます。

オオクチバス

アクアマリンいなわしろカワセミ水族館で撮影

大型で肉食性の強い、北米原産の外来魚です。
別名でラージマウスバスともいいます。

釣り人の間では”ブラックバス”と呼ばれる魚の一種で、バス釣りのターゲットとして有名です。
淡水での釣りとしてはアグレッシブな駆け引きが楽しめることから、人気の高い魚です。

しかし、見た目通り肉食性が強く、在来種を捕食する形で生態系を脅かしています。

見分け方としては、背中側は黄褐色、体の中央には黒く太い線が入ります。
この特徴を持ち、背鰭が2枚ある遊泳魚は、まず間違いなくオオクチバスです。
淡水魚でありながら、その雰囲気はスズキに近しい印象を受けます。

中央の黒線と背部の黄褐色に注目。
小型個体はこんな感じ。
小さいうちからも背中の黄褐色、黒線、背鰭2枚の特徴はすでに出ています。
さいたま水族館で撮影。
怯えるヨシノボリの視点にも見える?(ちょっと怖い)

本種に関しても生態系の影響度を考えると、可能であれば捕獲したその場で捕殺が理想的と考えます。

オオクチバスも滋賀県では条例により、キャッチアンドリリースも禁止です。

コクチバス

アクアマリンいなわしろカワセミ水族館で撮影

オオクチバスと同じく”ブラックバス”と呼ばれる、北米原産の外来魚です。

オオクチバスに比べ口が小さいから、コクチ。
また、スモールマウスバスとも呼ばれます。

こちらも釣りの対象魚として人気で、オオクチバス同様ターゲットにされています。

さいたま水族館で撮影。黒い縦線が目立ちません。

見た目通り肉食性が強いのですが、オオクチバスに比べると環境適応力も高いと言われています。
池や沼などの止水域だけでなく、流れのある河川にも適応できてしまうので、内水面漁業の視点からはオオクチバス以上にその悪影響が問題視されています。

基本的な特徴はオオクチバスとよく似ていますが、こちらは体の中央の黒い線が入りません。
代わりにうっすらと茶色のストライプが、まるで虎柄のように全身に入っています。
背鰭はオオクチバス同様に2枚あります。

コクチバスも滋賀県では条例により、キャッチアンドリリースも禁止です。
群馬県ではブルーギル、オオクチバスのリリース禁止は義務付けられていませんが、コクチバスだけリリース禁止が義務付けられています。

ウシガエル

北米原産の大型のカエルです。

極めて貪食な捕食者として知られています。
昆虫、甲殻類、魚類のみならず、小型の爬虫類や鳥類、哺乳類まで捕食した記録があるようです。

口に入るサイズであれば生息地に分布するあらゆる小型の生物を食い尽くし、在来のカエル類を追いやってしまいます。

隊長さん提供 ウシガエル成体
隊長さん提供 ウシガエルのオタマジャクシ
在来種でここまで大きくなるオタマジャクシは居ないので、大型のオタマジャクシ=ウシガエルのオタマと考えて概ね差し支えありません。

なおヨシノボリの採集においては、成体よりも幼体のオタマジャクシに出会うほうが多いかもしれません。
ウシガエルのオタマジャクシでよく見かけるサイズは8~10cmほどと、オタマジャクシにしては明らかに巨大なことが多いです。
網に入れば日本のカエルのそれではないとすぐにわかります。

小型の個体の場合は判別が難しいです。
種類が分からないオタマジャクシは、持ち帰るべきでは無いでしょう。

ウシガエルのオタマジャクシ。
4cm程度の小型個体。
同じくウシガエルのオタマジャクシ。
6cm程度の小型個体。

オオフサモ

大繁茂するオオフサモ

南米原産の水生植物です。
「ミリオフィラム」と呼ばれるグループの水草の一種で、もともと「パロットフェザー」という名前でアクアリウム用の水草として流通していた経緯がありました。

極めて繁殖力が強く、切れ端などが野外に逸出したことにより定着したと言われています。

その繁殖力の強さから、河川・溜め池などに侵入すると大繁茂してしばしば問題になります。
もともと観賞用だったこともあり、一見鮮やかで目を引く水草です。
しかし、栽培は禁止されていますので絶対に持ち帰ってはいけません。

なお本種はミリオフィラム系水草の中では、水中よりも水上を好む性質があります。

水上で勢いよく育つものの、水中ではあまり適応せず葉の展開が今一つであったようです。

このため水槽レイアウトにおいては、他のミリオフィラム類よりも扱いにくかったようです。

ホザキノフサモ(在来種)
オオフサモとは異なり、水中によく適応します。
オオフサモはこの性質がないために、使いづらかったようです。

条件付き特定外来生物

2023年に新しく設けられた枠組みです。
身近な生物としては、2023年9月時点で「アメリカザリガニ」「ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)」の2種が該当します。

「条件付き」の特定外来生物は、販売や放流は不可ですが、特定外来生物の中でも例外的に「活きたままの移動」や「飼育」に許可申請は不要な生物です。

かつてザリガニもミドリガメもペットショップで見かけることがありましたが、この指定により販売禁止となったため、今では見かけることはなくなりました。

これらの種は飼育自体は可能であり、その際に許可申請等は不要です。
しかし、放流行為は犯罪となります。

飼育する場合は、終生飼育が義務付けられています。

アメリカザリガニ

ヨシノボリと一緒に採れることも多いです。

ザリガニと言えば本種を指すほど、最も身近なザリガニです。

極めて適応力が高く、汚れた水にもしぶとく暮らします。
本種は環境改変能力が極めて高く、特に水草への被害が大きいです。


隊長さん提供
アメリカザリガニの子供。
茶色いと在来種の「ニホンザリガニ」と勘違いする人がいますが、アメリカザリガニは茶色いものもいます。

アメリカザリガニと言えば赤いイメージが強いですが、赤くない個体もふつうに見られます。
在来種であるニホンザリガニは、北海道から東北のごく一部の地域にしか分布していません。

該当地域以外であれば、茶色くてもまず間違いなくアメリカザリガニである場合が多いでしょう。

隊長さん提供
大量のアメリカザリガニ。

赤いのがアメリカザリガニ、他はニホンザリガニでしょうか?
いいえ、残念ながら茶色いものも全て、アメリカザリガニです。

ミシシッピアカミミガメ

北米原産の水生カメです。

もともと祭りの屋台などでも人気だった「ミドリガメ」の成長した姿です。

甲長5cm程度の子ガメのうちは愛らしく、鮮やかな緑色をしていることから愛玩用として人気だったのですが、最大で30cmほどに成長する上、成長すると体色もくすむんでしまいます。

飼うに飼いきれなくなって逃がされた個体が、定着してしまったと考えられています。

子ガメ。
かつて販売サイズは甲長5cm程度の愛らしいサイズであることが多かったのですが、成長すると30cmを超えることも・・・。

「ニホンイシガメ」などの在来カメ類と生態系における地位が被っており、本種は力が強いことからよりよい日光浴ができる場所を独占してしまうようです。

原産地ではアリゲーターなどが天敵ですが、日本では天敵らしい天敵がほとんどいません。
このため、一度侵入してしまうとどんどん数が増え続けてしまうと言われています。

在来のカメ類との見分け方としては、頭部にある赤い模様が最大の特徴です。
日本在来のカメにこの特徴を持つものはいません。

また、甲羅の裏面は黄色をベースに独特な緑褐色の模様が入るので、この点でも識別は容易です。

アカミミガメの裏面。なかなかに派手な模様をしています。
甲長30cmを超えても、ペットとして最後まで面倒を見切れる人だけが飼いましょう。

できることとできないこと

行為特定外来生物条件付き特定外来生物
採集可能可能
飼育不可可能
生きた状態での運搬・保管不可可能
死んだ状態での運搬・保管可能可能
捕まえたその場でのリリース
(キャッチ&リリース)
可能
※地域によっては、県の条例などで
禁止されている場合もあります。
可能
捕獲場所と違う場所へのリリース不可不可
一旦持ち帰ってからのリリース不可不可
販売・購入不可不可
知人への無償譲渡不可可能
頒布(不特定多数への譲渡)不可不可
※「不可」の行為は違法行為です。法律に違反しているため、絶対に行ってはいけません。

都道府県別リリース禁止条例

ブラックバス、ブルーギルなどの県条例によるリリース禁止の有無は、日本釣振興会のページを参考にしてください。

特定外来生物の飼育について

特定外来生物は原則的に飼育は不可能です。
個人の飼育において許可が下りることはまずないものと考えましょう。

学術研究や、教育施設などでの展示などを目的とする場合、あるいは特定外来生物に指定される以前から飼育していた場合は、飼育が許可されるケースもあります。

水族館で展示されている個体は、全て許可を得て飼育されている個体です。

「条件付き」特定外来生物のアメリカザリガニとミシシッピアカミミガメに関しては、飼育は可能です。
この2種の場合、飼育の際に許可申請は不要です。

学術研究、展示、教育、生業の維持等の目的で飼育したい場合

主に研究用や、学校であれば生物部など外来種問題への啓蒙・啓発を目的とした展示用としてであればこのパターンはあり得るでしょう。捕獲する前に申請が必要です。

例えば学園祭などで外来種問題の啓蒙・啓発を目的に展示する場合、余裕をもって申請しておきましょう。
少なくとも1ヶ月以上は見込んだ方が良いようです。

この場合であっても許可が発行されてからでないと、生きたままの運搬や飼育が許可されません。
許可を得てから採りに行く形となります。

特定外来生物として指定される以前から飼育していた場合

ここで紹介している特定外来生物に関しては、古くから指定されているためこのパターンに該当する種はいません。

しかし、比較的近年に指定された種であればこのパターンはあり得ます。

例えば、ペットとして販売されていることも多かった「ガーパイク」「ナイルパーチ」「ハナガメ」などは2016年に指定されたため、それ以前に飼育しておりまだ存命の個体もいるでしょう。

指定以前に飼育していた個体は環境省に飼育許可を申請さえすれば、今まで通りペットとして飼育できます。

指定前に飼育していた個体であっても、申請せず無許可で飼育を続けることは違法行為です。
指定後に捕獲した個体の飼育は、もちろん違法です。


注意したい外来生物

次に紹介する2種は特定外来生物ではありません。(2023年10月現在)
このため飼育・栽培に特に制限はありません。

しかし、繁殖力が強く在来種への悪影響が懸念されている生物です。

比較的よく見かけるうえ、持ち帰って飼育しても法律上の問題はありませんが、取り扱いには気を付けたい外来生物です。

スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)

田んぼやその近くの用水路などでよく見かける大型の巻貝の仲間です。
別名で「ジャンボタニシ」と呼ばれますが、タニシとはやや遠縁です。

雑食性で植物質・動物質を問わず、あらゆるものを食べてしまいます。
特に稲を食害する性質が問題視されており、生態系被害防止外来種に選定されています。

水槽内ではコケや残飯の掃除に有用とされますが、水槽の外に這い出てしまうことがあるようです。

脱走のリスクがあることを考えると、コケ取り用などとしての安易な導入は、とてもおすすめできません。

導入する場合は、しっかりフタをするなどの脱走防止対策も必要です。

オオカナダモ(アナカリス)

トチカガミ科の水草です。

「アナカリス」の別名で金魚藻の一種としても良く知られています。

非常に繁殖力が強く、一度繁茂すると一面を覆いつくしてしまうほど増殖してしまうことがあります。

一方で観賞用として販売されている側面もあり、「雑に管理しても育てやすい」「水質浄化能力が高い」「透き通ったグリーンの見た目が美しい」と、水槽内で栽培するぶんには有用な要素も持っています。

栽培する場合は非常に成長が早いので、途中でのカットは必須になります。
切れ端は絶対に屋外には捨てず、乾燥させてから燃えるごみとして処分してください。


特定外来生物一覧

このページでは全国的に広く見つかる外来生物をピックアップして紹介しました。

すべての特定外来生物一覧は、環境省が公開しているリストを確認してください。

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