どうも、サビぬきです。
今回は離島採集のルールとマナーについてまとめました。
採集者なら誰もが一度は憧れる、離島での遠征!
離島では独自の生態系が築かれていることが多く、本州では見られない生き物も数多く見られます。
その島でしか見られない固有種となっている生き物も、珍しくありません。
離島での採集は最高に楽しいものですが、その反面細かな注意事項もたくさん存在します。
今回は生物採集(特に淡水魚採集)を主目的とした離島遠征(航空機利用)にまつわる、知っておきたい細かい注意事項やルールやマナーなどを、特に初めて離島での採集を検討している方向けに詳しく紹介したいと思います。
※この記事は淡水魚狙いの人向けです。淡水魚以外の分類群を狙いたい人には、必ずしも当てはまらないかもしれません。
きっと共通する部分はあるとは思うので、分類群毎に必要に応じて読み替えて活用いただければと思います。
目標を決めよう
離島遠征においてまず重要なことは、何を採集してくるのか、明確な目標種を決めることです。
なんとなく離島に行って、なんとなく変わった魚が採れればよいかな~ という気持ちで臨むのはおすすめできません。
というのも、離島ではその島独自の貴重な生態系が築かれていることが多く、法律や条例などで採集が禁止されている生き物も多いからです。
採集可能なヨシノボリ
日本国内の離島のみに分布しており、採集に関して特に制限のないヨシノボリは
- アヤヨシノボリ(奄美諸島、沖縄本島)
- ケンムンヒラヨシノボリ(大隅諸島、奄美諸島、沖縄本島)
- ヤイマヒラヨシノボリ(八重山諸島)
- オガサワラヨシノボリ(小笠原諸島)
の4種となります。(※2023年7月現在)
ただし「ヤイマヒラヨシノボリ」「オガサワラヨシノボリ」の2種に関しては、その分布域の大部分が保護区となるようで、生息個体数も極端に少ないようです。
実質的に採集して持ち帰ることは困難、または好ましくない状況ではないかと思われます。
したがって離島遠征で目標となりうるヨシノボリ類は、実質的に「アヤヨシノボリ」か「ケンムンヒラヨシノボリ」になることが多いでしょう。
また、「シマヨシノボリ」のうち南西諸島に分布する個体群は本州のものとは模様が異なります。
琉球列島の地域個体群と言え、これも目標になりうると言えるでしょう。
沖縄本島、奄美大島、徳之島はこれら3種とも狙えるのでお得かもしれません?
(出会えるかどうかは別)
南西諸島以外にも目を向けてみましょう。
鹿児島県、沖縄県以外の離島のヨシノボリでは、長崎県の離島、壱岐島と五島列島にも、本土でよく見るものとは若干異なる「カワヨシノボリ」の生息が知られています。
かなりマニアックですが、これらも目標となりうるかもしれません。
ヨシノボリという淡水魚は同定が難しいとされるその性質上、調査が進んでいない島もきっと多いことでしょう。
本州ではよく見かけるシマヨシノボリやカワヨシノボリにも前述の変異が見られるので、他の島にももしかすると地域個体群などがいるかもしれません。
新発見を求めて、敢えて情報の少ない島に行くもの良い選択だと思います!
採集禁止のヨシノボリ
例えばヨシノボリの仲間では、
- アオバラヨシノボリ(沖縄本島固有)
- キバラヨシノボリ(奄美諸島、沖縄本島)
- イシガキパイヌキバラヨシノボリ(石垣島固有)
- イリオモテパイヌキバラヨシノボリ(西表島固有)
は採集が禁止されています。
これらの種を採集することはできません。
なおキバラヨシノボリ類は2020年までは、沖縄県では採集に制限はありませんでした。
アオバラヨシノボリも2021年までは、採集に制限はありませんでした。
少なくともアオバラヨシノボリの寿命は5年以上あるのではないかと思われるので、2023年現在、指定以前に採集した個体を所持している人はいます。これはまったく問題ありません。
また、繁殖に成功していれば、その子供を引き続き飼育していても問題ありません。
※当サイトで紹介しているアオバラヨシノボリは、全て制限前に捕獲された個体およびその子孫です。
その他の魚について
ヨシノボリを狙っているとそれ以外の魚にも同所的に遭遇することがあります。
採集する場合は採集禁止種でないかどうかはよく確認しましょう。
鹿児島県で禁止、沖縄県では制限なしの種や、逆に沖縄県で禁止、鹿児島県では制限なしという種もいます。
(2020年までキバラヨシノボリは沖縄県では採集可能でした。鹿児島県ではすでに採集禁止でした。)
旅行先は基本的に沖縄県、鹿児島県、長崎県のいずれかになると思います。
ヨシノボリ以外の魚も狙う場合は、それぞれの県で採集が禁止されている種も調べておきましょう。
よくわからない魚はリリースしておくのが無難です。
ポイント選定について
プランにも寄りますが、離島での採集可能な時間は基本的に長くはありません。
出かける前にストリートビューなどを活用し、いかに”よさげな川”を見つけておくことが重要だと思います。
ただし、”よさげな川”が見つかっても、その後にやることが。
それは、国立公園の特別保護地区に該当しないかどうかの確認です。
南西諸島は国立公園に該当する地域が多く、その中でも「特別保護地区」に該当する地域では生き物の採集が禁止されています。
なお第1~3種まである「特別地域」に関しては、淡水魚は採集可能です。
ただこのような地域での採集も、あまり好ましくはありませんね。
できるだけこれらの区域外の川から選ぶのが理想と言えるでしょう。
予約について
それではターゲットとなる魚を決めたら、日程を立ててみましょう!
時期について
淡水魚”のみ”を狙う場合、南西諸島は冬の方がおすすめです。
夏場は水温が上がりやすく、採集した魚を活かしておく難易度が高くなります。
保冷などに気を使う必要があり、温度管理にちょっと神経を使うピリピリとしたプランになるかもしれません。
この点冬場なら気温18℃ぐらいなので、水温をあまり気にしなくても長時間キープできます。
また不快な害虫類も少ないでしょう。
しかし海水浴や、昆虫採集など他の目的と組み合わせることができる点は、夏の遠征の魅力ですね。
写真を撮るにも夏の方が雰囲気は良いと思います。
最終的にベストな日程は、狙う魚種にもよるでしょう。
日数について
2泊3日以上がおすすめです。
ただしあまり日程が長いと、早い日程で採集した魚を活かした状態でキープしておくのが難しいかもしれません。特に夏。
個人的には、2泊3日または3泊4日が現実的と考えています。
撮影のみで全く採集をしない場合や、標本前提の場合は、何日でも良いとは思います。
長いほうが有利です。(その分お金はかかりますね……。)
レンタカーはほぼ必須
離島で淡水魚採集をする場合、レンタカーは必須だと思います。
契約時に物損事故などに対応可能な保険をつけるかどうか聞かれることもあるでしょう。
保険類は念のため、すべてつけておくべきだと私は考えています。
当然ですが、島内ではいつも以上に安全運転を心がけましょう。
空港への到着時間
1時間前が目安です。
採集用となると荷物が大きく特殊になるので、預け入れの際に中身について色々聞かれることがあります。
経験上、出発40分前の到着ではかなりギリギリでした。
最悪乗り遅れる可能性があるので、十分余裕をもって空港にはついておくことが大事です。
帰りは生き物を預ける場合、さらに余裕があったほうが良いです。
絶対採れるワケじゃない
自然を相手にする以上、行けば100%絶対採れるとは限りません。
採集の成否は、事前の下調べと当日の天候がカギを握ると思っています。
対象種や環境への理解度、事前の下調べで6割決まると思いますが、当日の天候など運の要素が残りの4割を握っていると私は考えています。
基本的に遠征費用は高額ですが、”採れない可能性もある”ことを念頭に置いておきましょう。
仮に全日程悪天候だった場合どうするか……。
観光をメインにするなど、サブプランを用意しておくことも重要かもしれません。
荷造りについて
予定が立ったら次は荷造り。
淡水魚採集を目的とする場合は、最低限必要な持ち物は次が基本となるでしょう。
(※着替えや財布など、一般的な旅行でも必要とするものはここでは省略します。)
基本の荷物
網は普通の長い柄のものを預けることもできますが、空港に行くまでの間めちゃくちゃ目立つかもしれません。
スーツケースに収納できるとベストですね。
他にもし魚を活かしたまま持ち帰るつもりなのであれば、発泡スチロールなど温度変化の少ないクーラーボックス、魚を入れる袋も必要です。酸素石もあったほうが良いでしょう。
梱包の際は、絶対に水が漏れないよう厳重に行う必要があります。
私の場合、通常は袋2重が基本ですが、航空輸送の場合は袋4重を基本としています。
袋は途中で破れたり使えなくなる可能性も考えて、最低限必要な数の1.5~2倍程度用意しておくと安心です。
預け入れor手荷物
一部の荷物は航空機に載せる際、預け入れにしなければならないもの、手荷物にしなければならないものがあります。
ここでは採集目的で行く場合に関連しそうな荷物について触れようと思います。
例えばカメラやスマホに搭載されているリチウムイオンバッテリー類は必ず手荷物で持たなければなりません。
充電式のヘッドライトなどもリチウムイオンバッテリーで動く製品の可能性があります。
よく確認しておきましょう。
一方でハサミやナイフ類は必ず預け入れなければなりません。
釣りをする場合は持っていくことが多いかと思いますので、注意が必要です。
充電式エアーポンプも、リチウムイオン電池で動作する製品の場合があります。その場合は必ず手荷物です。
ひとまずバッテリー類は手荷物、刃物類は預け入れと覚えておくと良いかと思います。
手荷物と預け入れ、それぞれに入れるべき荷物を誤ると保安検査で引っ掛かります。
最悪の場合飛行機に乗り遅れることがあるので注意しましょう。遠征が台無しです。
※荷物に関する詳しいルールに関しては、ご利用の航空会社に確認するようにしてください。
道具はよく洗ってからしまおう
離島遠征に行く場合、網やウェーダーなどの採集道具類はいつも以上に良く洗ってから荷造りしましょう。
島に行くまでに草や藻などが絡みついていないよう入念にチェックし、よく乾燥させてから荷造りしてください。
また、島内での移動時にレンタカーなどを汚さないように、使わないときは網の先端に袋を被せておきましょう。
現地での行動について
いよいよ待ちに待った離島採集のはじまりです!
次の項目を念頭に置きつつ、ルールとマナーを守って楽しく採集しましょう。
よく知らない生き物には手を出さない
事前に採集すると決めた生き物以外は、見つけても手を出さないほうが無難です。
よく分からない生き物は写真だけ撮っておき、後で詳しい人に聞くのが良いでしょう。
持ち帰りは必要最小限に
採集する数は原則必要最小限に留めましょう。
狙う生き物の種類にもよるかもしれませんが、一般家庭で飼育する分には数匹いれば十分なことが多いのではないでしょうか。
採集禁止種でないからといって何十匹と持ち帰ろうとする人も中にはいるようですが、これは採集という趣味の首を絞める行為です。
行き過ぎると採集という行為そのものが制限されてしまうかもしれません。
また持ち帰ったからには、途中で飽きて逃がすようなことは許されません。
終生飼育しなければならないことも考え、現地で見かけられる個体数とも相談しながら持ち帰る数は決めましょう。大抵の場合、そんなに多くはならないはずです。
例えばヨシノボリ類は縄張り意識が強いので、複数のヨシノボリ類との混泳は難しいことが多いです。
野外では仲良く暮らしているように見えても、水槽内は狭いのでどうしてもケンカしがちです。
施設はきれいに使う
当然のことですが、レンタカーやホテルなどは汚さないようにきれいに使いましょう。
採集をしているとどうしても汚れがちですが、それもなるべく最小限に。
汚してしまった場合は、自分で掃除しましょう。
地元の人の指示には従う
地元の方が生活している場所ですので、何か指示があった場合はそれに従いましょう。
採集行為は一般の方から見ると不審な動きをしているように見えることがあります。
何をしているか聞かれた場合、正直に答えましょう。
採れた魚を見せると、思いがけない方言名や地元の歴史などを教えてもらえる場合もあります。
採集中に現地の方を見かけたら、こちらから挨拶するのがよいでしょう。
また、もし現地の方から中止するよう求められた場合は中止しましょう。
仮に法令上問題のない行為だったとしても、そのまま続行すると採集行為そのものへの印象が悪くなります。
言い訳はせずに、トラブルは避けるのが鉄則です。
採集した生き物を航空機に預ける
採集成果を生かした状態で持ち帰るのはある意味最重要かもしれません。
生き物を持ち帰る場合は、空港には1時間以上前に到着しておいた方が良いでしょう。
基本的に預け入れ荷物になるかと思います。
とても小さい魚で、ごく少数なら手荷物で行けることもあるかもしれません?
預ける場合は絶対に水漏れしないよう厳重に梱包したうえで、X線検査を通す前に中に生き物(小魚)が入っている旨を係の方に伝えましょう。
その後の対応は航空会社によって異なるようですので、係の方の指示に従ってください。
持ち帰ろうとしている生き物の種類や数、航空会社の判断によっては持ち帰れない場合もあります。
その場合は、時に諦めることも必要でしょう。
なお、貨物室内は基本的に温度調節は行われていません。
このため、保冷については自分で対策を講じる必要があります。
魚の場合水が入る以上、それなりに重量が加算になります。
重量オーバーで追加料金が発生する場合がありますので、財布には少し余裕を持たせておきましょう。
ルールとマナーを守って楽しく離島遠征してみましょう!
まだ見ぬ体験が、離島では待っています!
※もし記載事項に誤り等がありましたら、コメントでご指摘いただけますと助かります。
離島採集の遠征記
ひとまず種子島編だけ。
今後増えるかもしれません。
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