ウキゴリとその仲間たち

ウキゴリ 和歌山県産
スミウキゴリ 新潟県産
シマウキゴリ 新潟県産

ウキゴリはヨシノボリと同所的に生息していることが多い小型の淡水ハゼです。

「ウキゴリ」「スミウキゴリ」「シマウキゴリ」のよく似た3種がいます。
頭部に赤いV字状のラインが入らない点で、ヨシノボリとは容易に識別できます。

ヨシノボリとサイズ感が似ているので、網に入ると誤認してしまいやすいです。
ヨシノボリを狙っていると、ちょっと期待させてから落としてくるような存在です。

ヨシノボリとの識別は、頭を確認。
赤いV字ラインの有無を見れば一発です。

3種類いるウキゴリの特徴

ウキゴリには「スミウキゴリ」「シマウキゴリ」というよく似た種がいます。
3種の識別点は次の通りです。

なお、複数種が同一河川内に混生していることも珍しくはありません。

項目ウキゴリスミウキゴリシマウキゴリ
外観
学名Gymnogobius urotaeniaGymnogobius petschiliensisGymnogobius opperiens
分布
北海道、本州、四国、九州
※四国は外来の可能性

北海道、本州、四国、九州

北海道、本州、四国、九州
※茨城県・島根県以北
サイズふつう5~10cm程度
最大13cm
生息環境河川、用水路、ため池、湖河川、用水路河川
生活史両側回遊型、陸封型両側回遊型両側回遊型
識別点背鰭の黒斑



尾柄部の黒斑

塊状の黒点

塊状の黒点

90°横倒しのY字状

ウキゴリ

ウキゴリ 和歌山県産

最もスタンダードなウキゴリです。
沖縄以外の全国に分布しています。

四国には分布しないとされていましたが、移入と推定される個体が近年みられるようになったようです。

3種の中では唯一陸封型も知られており、海に面していない内陸部の都道府県でも見られます。

内陸部の山間地域で採れるウキゴリは、ほとんどの場合本種でしょう。

ウキゴリ 新潟県産
婚姻色の出たウキゴリ 群馬県産

ウキゴリ類は3種とも、婚姻色が♀に現れます。
産卵期の春になると、♀はお腹が鮮やかな黄色に色づきます。

スミウキゴリ

スミウキゴリ 新潟県産

海辺の地域ではよく見かけるウキゴリです。
沖縄県以外の全国の沿岸域に分布しています。

海に注ぐ河川の下流域を好む傾向があり、本種が採れる河川ではシマヨシノボリも一緒に採れることが多いです。

沿岸部では普通種ですが、内陸部ではめったに見かけることのない種類と言えるでしょう。

本種は第1背鰭を見れば他2種と容易に区別できます。
第1背鰭に黒斑が無ければ本種です。

第1背鰭後半部に黒斑が無く透明なので、”澄み”ウキゴリと覚えておくと判断の際に便利でしょう。

スミウキゴリ 神奈川県産

シマウキゴリ

シマウキゴリ 新潟県産

本州北部の沿岸域に分布するウキゴリです。
3種の中では一番珍しいかもしれません。

スミウキゴリと似た環境を好みますが、スミウキゴリに比べ流れの強い環境を好む傾向があります。

3種の中では最も急流域に適応した種と言えるでしょう。

シマウキゴリ 新潟県産
シマウキゴリ 新潟県産
シマウキゴリ大型個体 新潟県産

本種の外観はウキゴリと非常によく似ています。

尾鰭の斑紋の形と、好む環境がウキゴリとは異なるのでこの2つが手掛かりとなるでしょう。
またウキゴリに比べ北方系の種となるようです。

尾鰭の斑紋はウキゴリは円形の塊状になることが多いのに対し、シマウキゴリでは90°横倒しにしたY字状に分岐することが多いです。

また、体側の斑紋もウキゴリやスミウキゴリでは不明瞭で個体差が大きいのに対し、シマウキゴリはH字状の斑紋が規則的に連なる傾向があります。

見分け方のコツ!
この4点で見分けよう
  • 第1背鰭後半部に黒い斑があればウキゴリかシマウキゴリです。
    なければスミウキゴリです。
  • 採れた場所が日本海側は島根県、太平洋側は茨城県以北でなければ、ウキゴリです。
  • 島根県・茨城県以北であれば尾の付け根の斑紋を見ます。
    黒い塊状であればウキゴリ、Y字状に分岐していればシマウキゴリです。
  • ウキゴリは河川から用水路、湖、溜め池までおよそどんな水域でも見られますが、シマウキゴリは海に注ぎこむ流速の速い河川を好み、生息できる河川には条件があるようです。

ウキゴリ類の飼育

ハゼ類としては比較的温和な性格をしており、飼育しやすい魚です。
基本的な飼育方法はヨシノボリと全く同じです。
餌も全く同じものを食べてくれます。

ヨシノボリと違うところは、「攻撃性が低くおとなしめ」である点と「中層をふわふわとホバリングする」点です。

ウキゴリはヨシノボリよりもおとなしく攻撃性も低いので、他の魚との混泳にも向いています。
むしろウキゴリが攻撃されてしまわないように注意が必要です。
ヨシノボリとケンカすると負けてしまいやすいです。

飼育する場合は石を複雑に配置するなど、隠れ家を増やすと良いでしょう。

またウキゴリは常に底層に居るわけでなく、水槽の中層をふわふわと漂うように泳ぐことも多いです。
中層に浮くごり(ハゼ)だからウキゴリ。名前の由来にもなった習性です。

水流はあっても無くても飼育は可能ですが、ウキゴリ、スミウキゴリは水流を弱めにした方がホバリングを行う本来の生態を観察できるでしょう。

一方でシマウキゴリは急流域に分布するため、あまりホバリングしないようです。
流れがあったほうが、本来の生態を観察できると思われます。

コメント

  1. イシソーン より:

    初めまして。トウカイヨシノボリが大好きでこちらのサイトを知りました。
    ウキゴリも大好きだったので、こちらも興味深く読ませてもらったのですが・・・

    一つ質問があります。ウキゴリは四国を含む沖縄以外の全土に生息をしているとの資料(ヤマケイの「日本の淡水魚」等)と、こちらの様に四国と沖縄を除く日本全国に生息しているする物の二つの説?があります。
    どちらが正しいのでしょうか?

    ネットで検索していると、四国の方でも生息している方が正しいように思えるのですが。
    どちらが正しいにせよ、四国の様に大きな地域に、生息している、していないと
    解釈が別れるのはとても不思議です。

    ご回答を頂ければ嬉しく思います。

    • サビぬき サビぬき より:

      コメントありがとうございます。
      ウキゴリの分布情報につきましては、「平凡社 新版 日本のハゼ」を参考とさせていただきました。
      また改めて四国地方のウキゴリの分布を調べさせてもらいましたところ、どうやら近年移入例が見られるようになった ようです。

      つまるところ在来分布ではないようで、近年になり国内移入によって生息していることが分かってきた ということになるようです。

      • イシソーン より:

        返信ありがとうございます。
        近年になっての国内移入、つまりは国内外来種だったんですね。
        在来種とばかり思っていたので、驚きました。
        本州と九州に生息している生物の大半は、四国にも分布していますから。

        それなら、四国に生息している資料としていない資料が
        混在していることにも納得いきます。
        長くの疑問がすっきりしました。ありがとうございました。

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